クレーム対応や夜間見回りなど、雑務で疲弊する先生たち。休職や早期退職も増え、現場は常に綱渡り状態です。一方、PTAは過渡期にあり、従来型の活動を行う“保守派”と改革を推進する“改革派”がぶつかることもあるようです。現場での新たな取り組みを取材しました。AERAとAERA dot.の合同企画。AERAでは9月24日発売号(9月30日号)で特集します。

【写真】スクールロイヤーとして活躍する真下弁護士

教育に関連した法務に通じており、スクールロイヤーとして活躍する真下麻里子さんに聞きました。

教員の長時間労働が問題視されて久しい。若者の教員離れの原因にもなっている(写真/iStock / Getty Images Plus)
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 弁護士としていじめ問題を中心に相談を受けていますが、近年増えてきた相談が「保護者の対応」です。

 長時間労働とともに、保護者からのクレームも教員を疲弊させる要因のひとつ。毎日遅くまで学校や、時には個人の携帯に電話がかかってきて業務に支障をきたしたり、若い教員が「一般企業ではまかり通らない」などと追い詰められて、耐えられずに辞めてしまうこともあります。

 学校は公的な場で、保護者や地域と円満な関係を築かねばならず、クレームには逆らいにくい。弁護士はなりたてのとき、自分が紛争に巻き込まれないためにどうやって身を守るか指導を受けます。先生も同じように、自身を守れないと、本来の仕事を遂行することが難しくなります。

 仕事の内容も「子どものために」を超えて、専門以外のことまで背負っているのが現状です。まずはどこまでが教員の領域なのか、議論を尽くすべき。「大変そうだから、この仕事は減らしましょう」と場当たり的な対処の仕方では、教員の専門性の軽視に繋がりますし、教員のやる気も削いでしまいます。そのうえで学校側も、無理なものは無理と断る気概も必要です。

 学校を支えるためには、自治体が教員の負荷を減らすような仕組みを作るのが理想的です。たとえば保護者からのクレームを引き受ける部署を設けたり、問題が生じたとき、内容に応じてソーシャルワーカーなどの外部専門家に繋げていけば教員の負担も軽くなる。教員が本来の仕事に没頭し、活力を持って仕事に臨むことが、子どもたちにとっても望ましいことのはずです。

真下麻里子(ましも・まりこ)
2011年に弁護士登録。教育に関連した法務に通じており、スクールロイヤーとして活躍。「ストップいじめ!ナビ」にも携わっている

(構成/ライター・柿崎明子)