まずはしっかり成果を出す
何はともあれきちんと成果を出す。話はそれからだ。
リモートワークの方が集中しやすく成果を出しやすい仕事があるのも事実だ。通勤に疲弊することもない。その時間と余裕を情報収集に充てて思考の幅が広がり、質の高い成果や中長期的な成果につながる変化などもある。
しかし、働き方を変えただけで劇的に成果が変わるということはなかなかないだろう。もともと成果を出している人が、働くうちに「ここをこう変えられたら、もっと成果を出せるのに」と感じた障壁を取り除くことで、さらに成果を出せるようになるのだ。
まだ成果も出していない人が「こうしてくれたら成果が出せます」と言ったところで組織は信じない。
実際、成果も出ないだろう。まずは現状の働き方で成果を出してから、もっと成果を出すための手段として働き方の変更を提案するのがよい。
「働き方は任せてほしい」と伝える
一方、突発仕事や急ぎの対応、あるいは誰もやりたがらない仕事を引き受ける条件として「働き方は任せてほしい」と主張するのは合理的である。
「他の仕事も忙しく引き受ける時間的余裕がないですが、リモートワークを認めてくれたら可能です!」
このように条件として提示してみよう。職場以外の場で仕事をしたほうが仕事のクオリティが向上するケースも多々ある。
合わせて、「それが無理なら引き受けられません。もしくは残業が必要になります」とも伝える。残業抑制に対する感度が高まっている企業は多い。マネージャーも長時間労働の常態化は避けたいはずだ。
メリットや感謝の気持ちをフィードバックする
今は理想的な働き方ができている人も油断はできない。同じ会社でも、職種によっては出社が必須の部署もある。そのような人たちとの不公平感を解消するために、「やっぱりリモートワークは禁止」と戻す企業もある。非対面のコミュニケーションを億劫に感じる管理職の一存で原則出社に転じる部署もある。
その空気を作らないために、リモートワークのメリットや感謝の気持ちを日頃から声にしよう。
「作業効率が上がりました!」
「社外の人と出会えてネットワークが広がりました!」
「公共交通機関や駅の混雑緩和に貢献していて、企業として素晴らしいと思います!」
または人事部門、情報システム部門、広報部門などの人たちに感謝を伝える。
これらの社内部署は、ともすれば感謝されない、文句だけ言われて傷ついている人もいる。制度を守りたい/残したいなら、効果や感謝の気持ちを伝えるのも大事だ。それが各部門の自信と効力感を高め、さらには彼/彼女らからの経営陣に対する提言につながることもある。
働き方を変える合理性を紹介した記事などを回覧する
それでも働き方を変えられない、変えたくない圧力が強い場合の荒技を紹介しよう。
理想とする働き方の合理性を解説した記事を社内回覧することだ。
「この記事参考になります」「この観点で話し合ってみたいです」などコメントを添えて社内チャットや社内SNSなどに記事のリンクを投稿する。あるいは社内の読書会などで、その働き方を肯定している書籍を扱うよう提案してみる。
この利点は、あなたが悪者になる必要がないことだ。あくまで「この記事や書籍を書いた作家や専門家がこう言っていますが、どう思いますか?」のスタンスだ。すなわち、作家や専門家に汚れ役になってもらえばよい。
ちなみに筆者は日経クロステックの連載で『「原則出社」に戻す前に考えてほしい、テレワークによって解決が近づく10の課題』という記事を公開している。なんなら、この記事のリンクを社内回覧してみよう。筆者でよければ喜んで悪役になる。
(本稿は、書籍『組織の体質を現場から変える100の方法』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)