黒岩麻里『「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実』(朝日新聞出版)
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 最近の傾向としては、少なくとも健康上に問題のない一般男性においては、成人後の男性ホルモンの分泌量と指比は関係がないと考えられています。

 ただし、急激な男性ホルモン値の増加には、指比が関係しているという報告があります。一般的に、攻撃を受けるなどの競争状態になると、男性ホルモン値が急激に増加することが知られています。胎児期に多くの男性ホルモンを浴びた男性ほど、競争状態になると男性ホルモン分泌量を効率的に増加させることができ、そのために筋肉のパフォーマンスが向上する、ということなのです。

 そのため、先にご紹介したサッカーやラグビーなどの、激しい競争を伴う多くのスポーツの選手においては、男性ホルモンの分泌量と指比との相関があると考えられています。

 さらに、素早い判断力や迅速な反射行動にも影響し、莫大な利益を上げる金融ディーラーの人差し指が短い、といった研究もあります。

COVID-19にも指比が関係する!?

 さらに2020年に入ると、この年の初めから世界中で大流行したCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)と指比の関係性に関する論文まで出てきました。

 新型コロナウイルス感染症の死亡率が、女性に比べて男性に高いという報告があり、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)など、他の病原性コロナウイルスを原因とする感染症においても、同様に男性の死亡率が高いというものもあります。

 男性は女性に比べて免疫反応が弱い傾向にあり、コロナウイルスなどを含む様々な感染因子に対して敏感であると考えられています(ただし、自己免疫疾患については、男性よりも女性の罹患率が高いことが知られています。)。

 そのため、男性ホルモンが私たちの免疫系に何らかの影響を与えているのではないかと考えられており、新型コロナウイルス感染症と指比の関係についても調査されました。これもマニング教授らの研究です。

 25万人以上の新型コロナウイルス感染症患者について調べられ、指比が大きい、つまり胎児期に浴びたアンドロゲンシャワーの量が少ない男性ほど、新型コロナウイルス感染症の重症度と死亡率が高いという結果が得られています。

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