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 あなたは、自分の人差し指と薬指の長さを比べたことがあるだろうか。この、長さを比べる「指比」の研究は世界中で行われている。北海道大学の黒岩麻里教授が、自著『「Y」の悲劇 男たちが直面するY染色体消滅の真実』で紹介した、「指比」研究が明らかにしてきた意外な人間の才能とホルモンとの関係を、本書より一部抜粋・再編してお届けする。

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胎児が浴びるホルモンシャワー

 突然ですが、精巣の発生が始まるのは、ヒトでは妊娠8週目頃といわれています。胎児の身体に精巣がつくられると、そこから男性ホルモンが大量に分泌されます。この大量分泌は妊娠12週目頃から顕著になり、16週目あたりをピークに22週目頃まで続きます。

 胎児期におけるこの一過性の男性ホルモン分泌は、「アンドロゲンシャワー」とよばれています。

 大量に分泌された男性ホルモンは、胎児の身体の隅々まで届けられ、後に男性型に発達していくために様々な細胞、組織、器官を整えていくと考えられています。ですので、胎児期に男性ホルモンのシャワーを浴びることは、男性にとって大変重要なイベントです。

 このアンドロゲンシャワーをどれくらい浴びたのか、大人になってからも知ることができるといわれています。

 大変有名なのは、人差し指と薬指の長さを比べる「指比」の研究です。

 人差し指と薬指の長さの比は、示指環指比や、第2指・第4指比(2D:4D比)とよばれ、人差し指の長さを薬指の長さで割った値のことです。

 男女で指比に差があることは、なんと150年ほども前の1875年に報告されています。

 人差し指と薬指の長さを比べると、男性は女性よりも人差し指がより短い、つまり指比の値が小さいということが知られています。

 日本人の双子300人を対象として指比を調べた研究では、男性の平均値が0.951(標準偏差0.035)、女性の平均値が0.968(標準偏差0.028)と報告されています。

 指比の研究は世界的に盛んに行われ、男性同士で比べた場合でも、胎児期にアンドロゲンシャワーをより多く浴びた男性ほど、薬指より人差し指がより短い傾向があることが報告されてきました。

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