男性は指の長さが能力に影響する?
さらに1990〜2000年代には、指比が私たちの様々な特性と相関がある、という報告が相次ぎました。身体能力や行動、判断力、性格や気質、病気のかかりやすさなど、成人してからの男性の様々な特徴に影響を及ぼす、といったものです。
イギリス、スウォンジー大学のジョン・マニング教授は、指比研究の第一人者で、指比と男性の特徴についての研究報告や著書などを多く発表しています。
1998年、彼をはじめとする研究グループは、2歳児において指比に性差が現れていることを報告しました。
胎児期にはアンドロゲンシャワーが起きて男性ホルモンを大量に分泌しますが、これは一過性のもので、出生前には男性ホルモンの分泌量は低レベルになっています。そして思春期を迎えるまで男性ホルモンの分泌量は少ないままです。
つまりこの研究から、指比に見られる性差は、出生後の男性ホルモンの影響ではなく、胎児期における男性ホルモン量の影響ではないかという考察が発展し、この報告以降、指比についての研究が世界中で行われるようになります。
マニング教授は様々なスポーツと指比の関係を調査する研究を行いましたが、中でもイギリスのサッカー選手の指比を調べた大変有名な研究があります。
一般男性30名とサッカー選手(選手経験者を含む)30名の指比の値を比べたところ、一般男性の平均は約0.98でしたが、サッカー選手では約0.95と人差し指がより短いことがわかりました。
さらに、200名ほどのサッカー選手を対象に、そのクラス分けに応じて指比を比較したところ、国際的に活躍していた選手やコーチの値の平均は約0.94と、さらに人差し指が短い傾向がわかりました。これは、名プレイヤーほど、胎児期に浴びたアンドロゲンシャワーの量が多いことを示唆します。
では、成人男性における男性ホルモンの分泌量と指比は、関係があるのでしょうか?
これについては、論文によって異なる見解が出ています。人差し指がより短い、つまり胎児期に男性ホルモンを多く浴びたと予想される人ほど、成人後の男性ホルモンの分泌量も多い、という報告もあれば、相関はないとの研究報告もあります。