『たぶん私たち一生最強』(1760円〈税込み〉/新潮社)
少女漫画家の花乃子(26)は恋人と別れ、友人の百合子、澪、亜希を前にハイボール(濃いめ)を片手に叫んでいた。「私、マジでこの中の誰かと死ぬまで暮らしたいと思ってんだけど」──そして始まった4人の共同生活。その先にある決断が待っていた──。女子の本音と未来が炸裂するエンドレスガールズトーク小説

「私自身、振り返ると20代後半の時期はやっぱりつらかったなと思います。結婚も出産も『そういう時代じゃないしね』と口では言っても35歳以上の初産が高齢出産という定義は変わらずにあるし、友人たちは続々と結婚、出産に舵を切っていく。そのなかで恋人・夫・父親として良い男性をリミットまでに探さなきゃいけないのはムズすぎる!(苦笑)。結局、男性としかできないことは生殖くらい。ならばそれをクリアしてしまえばいいんじゃないかと」

 そこからが本作の斬新さだ。「子どもはほしいけど夫はほしくない」という亜希が精子提供を受けてシリンジ法で妊娠し、ほかの3人に「共同子育て」を提案するのだ。

「ルームシェアを描いた作品は最終的に『それぞれの道へ。解散』という展開が多い気がします。私はその先を書きたかったんです。突飛な物語と思う人もいるかもしれないけど、手段は現実にできないものではない。シリンジ法での妊娠についても妊活キットのAmazonのレビューが600件以上もあって普通の夫婦が普通に利用していることにびっくりしました。それに実際、周囲の子どものいる夫婦で余裕がありそうな家庭はないです。人手的にも経済的にも、子1人に対して4人ぐらいの協力が必要じゃない?という実感もあって」

 4人の決断はこれまでの概念を超えるニューノーマルになるかもしれない。

「多様な家族がもっと増えている未来になっていればという思いもあります。若い世代がこれを読んでちょっと自由な気持ちになってくれれば嬉しいですね」

 本欄の担当編集者が「祈るような気持ちで読んだ」と言う4人の人生の行方とラストをぜひ確かめていただきたい。

(ライター・中村千晶)

AERA 2024年9月23日号

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