そして、それ以上に大きな差がついた原因と感じるのが監督就任前から在籍していた選手の部分である。中日で立浪監督就任前と比べて大きく成績を伸ばしたのは高橋宏斗と岡林勇希がいるが、それまでレギュラーだった選手はほとんどが成績を落としているのだ。

 投手では柳裕也小笠原慎之介大野雄大、野手では大島洋平、ビシエド、高橋周平、木下拓哉といった面々である。成績を伸ばした選手を見ると投手では清水達也、橋本侑樹、松山晋也、野手では村松開人、福永裕基、田中幹也などの名前が挙がるが、清水と橋本以外は立浪監督就任後のドラフトで加入した選手なのだ。ルーキーを早くから抜擢して戦力にしたという見方もできなくはないが、現有戦力を引き上げることができなかったのは確かだろう。

 一方の日本ハムを見てみると投手では加藤貴之、河野竜生、生田目翼、野手では松本剛、万波中正、田宮裕涼、清宮幸太郎といった選手が成績を伸ばしている。チームとして結果が出なかった昨年までの2年間で、戦力を見極めたことが奏功していると言えるのではないだろうか。

 低迷しているチームの選手なのだから力がなく、どんどん“血”を入れ替えてチームを作り変えるというやり方ももちろん一つの方法である。かつての星野仙一監督などはそれで結果を残したと言えるだろう。ただ、立浪監督就任後の中日はそこまでフロントが補強に熱心ではなく、チームを変えるような大物を獲得しているわけではない。そんな状態で選手を入れ替えても効果は薄く、現有戦力の成績低迷にも繋がってしまった部分はあったのではないだろうか。

 これはもちろん立浪監督だけでなく、球団全体の問題と言える。2020年のオフに福谷浩司が契約更改の場で球団のビジョンを問い、答えられなかったということが話題となったが、その後もビジョンは見えないままの状態が続いていると言えるだろう。果たして強い中日は戻ってくるのか。オフの動向に引き続き注目したい。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
 

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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