本来、ピンクの歯茎があるところの歯茎が痩せて下がってしまっているので、隙間ができており、なんだか黒くみえてしまいます。「よりによって、前歯の歯茎が痩せなくてもいいのに……」と歯磨きをするたびに思うのですが、全ては自分が悪いのです。それまで歯磨きをすることを面倒に思い、セルフケアが十分でなかったがために、歯周病を引き起こし、結果的に歯茎が痩せてしまう状態まで放置してしまっていたのですから。

 歯周病だったことが判明してからというもの、電動ブラシを朝晩と食後に、毎日欠かさず行うようになりました。歯間ブラシで歯間のケアもするように言われたので、歯間ブラシも夜にはなるべく行うようにしています。歯周病が原因で痩せてしまった歯茎は、残念ながら元には戻りませんが、日本での定期的な受診とその際のクリーニング、そして日々のセルフケアで、歯周病はそれ以上進行することもなく、現状を維持することができています。

 日本を離れてからは、日々のセルフケアのみ。最後の歯科受診から半年が経つ頃になると、前歯の歯間に歯石が溜まっていくのが目に見えてわかる状態だったため、「このままでは、また歯周病が進行してしまうのではないか」と不安を感じました。そのため、やっと医療保険に加入でき、アメリカの歯科医院への受診予約ができたときは、ほっとしたことを覚えています。

 サンディエゴの歯科医院では、診察室に通されるなり、何枚もの歯のレントゲンを撮られました。角度や向きを変えての撮り直しも加えると、30枚ほどになったのではないでしょうか。予想していなかったレントゲン撮影に、歯や歯茎の状態を確認する前からすっかり疲れてしまったのでした。

 長らく歯科受診から離れてしまっていたものの、幸いなことに、虫歯や進行している歯周病もありませんでした。しかし、大量のレントゲン撮影の結果、歯茎の深いところに、歯石(プラークが石灰化したもの)が付着しているところが1箇所だけあることが判明しました。先生曰く、「このまま放置しておくと、将来的に歯周病になってしまうよ」とおっしゃるではありませんか。

 それを防ぐためには、日本では聞いたこともやったこともない「ディープクリーニング」という麻酔を使用したクリーニングをした方がいいということで、後日、ディープクリーニングをすることにしました。ちなみに、ディープクリーニングの治療は、保険適応ではありましたが、保険適応ではない抗生物質の処方代などを合わせると、私の場合、250ドルほどの高額な医療費が必要でした。

 歯周病になってからでは遅いことは、すでに体感している私は、ディープクリーニングの治療後、さらに歯磨きのセルフケアを徹底するようになりました。このディープクリーニングから3カ月後の定期検診では、経過良好とのことで、普通のクリーニングで済みました。年に一度、大量のレントゲン撮影を行って、歯茎の深いところに、歯石が付着していないかのチェックをするようです。次回は、ディープクリーニングをする必要がないように、歯のセルフケアを怠らずに継続していこうと思った経験となりました。

【参考URL】

 (※1)https://www.perio.jp/nyankamuchu/#:~:text=%E6%AD%AF%E5%91%A8%E7%97%85%E3%81%AF%E3%80%81%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%82%AF,%E3%81%9F%E3%82%8A%E3%80%81%E8%85%AB%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%82%8A%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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