トヨタをもしのぐBYDの技術

 もう一つ重要な点は、EVとPHVの関係だ。BYDはEVメーカーとして知られるが、実は世界で最初の量産PHVメーカーで、ガソリン車の生産は終了したがPHVとEVの両方を製造販売している。

 しかも、「DM-i」というPHVの技術は、文句なく世界一のレベルだ。PHVはガソリンエンジンと電池の両方を使う上に外部からの充電もできる車だ。トヨタなどもPHVを販売するが、ほとんど売れていない。HVに毛が生えた程度の性能で、価格が高いからだ。

 普通のPHVは、電池切れになるとガソリンエンジンで自動車を駆動する。しかし、BYDのPHVでは、電池がなくなるとガソリンエンジンを使って発電し、その電気でモーターを駆動して走る。発電専用に特化した最適なアルゴリズムの設定でエンジンを動かすため、燃費が非常に良くなる。実際には、電池だけでも100〜200キロ程度は走るので、日常の走行距離ならそれで十分に間に合う。長距離の場合は主に高速道路で走るので、そこでも電池の制御が市内走行よりも効率的になることから全体としても燃費が良くなる。

 BYDは第5世代のPHVシステム「DM-i5.0」を搭載する2車種を5月に発売した。燃費は1リットルあたり34キロ。電池とガソリンを使った走行を組み合わせた総航続距離は2100キロとされている。トヨタの燃費を上回るという計測データも出て、世界を驚かせた。

 トヨタがHVの上にあぐらをかいているうちに、BYDはPHV向けガソリンエンジンでもトヨタを抜き、PHVでははるか先を行っているのだ。

 焦ったトヨタは、新たなPHVの開発を発表したが、その投入時期は未定。トヨタの苦境は明らかだ。

 そんなトヨタを尻目にBYDのPHVはバカ売れしている。

 BYDの2024年4〜6月期の世界販売台数は98万台で前年同期比40%増とすごい伸びを示した。このうち海外販売では約3倍増の10万5000台だ。

 世界販売台数が5%減の92万台だったホンダを四半期ベースで初めて抜いた。日産やスズキもすでに抜いていて、今や、BYDの上位にいる日本勢はトヨタだけ。米フォードの背中も見えている。

 この大躍進は続くと私は見ている。

 その理由は、前述のPHVが今後、世界でバカ売れするからだ。トヨタなどがHVでEVまでの過渡期を乗り切ろうとしているが、BYDのPHVはトヨタのHVより性能がはるかに上で、しかも、価格も大幅に下がってきた。

 途上国でEVには限界があると言われるが、BYDのPHVなら充電インフラの未整備は大きな問題にならない。

 トヨタのHVが近いうちにBYDのPHVに敗北する可能性はかなり高い。

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