バンコク国際モーターショーでタイ工場の完成をアピールするBYDの劉学亮氏=2024年3月

自動運転との相性の良いEV

 このEVブームに乗って雨後の筍のようにEVメーカーが生まれたが、激烈な競争と淘汰によって、EVの価格が急落して需要が急拡大した。それによりさらにコストダウンが実現するという好循環となったのだ。

 しかし、最近の中国景気の後退に伴い、EV販売の勢いにブレーキがかかった。また、今後の拡大が期待される地方でも、充電ステーションの整備が十分に追いつかず、EV販売の拡大速度が遅くなってきた。

 これらをとらえて、中国でもEVブームが終わったというような宣伝が行われている。

 日本では、今後は、HV(ハイブリッド車)の時代だという声をよく聞く。特に、アメリカや途上国ではそうなるというのだ。その証拠として、トヨタのHVの売り上げが、アメリカで非常に好調で、EVをはるかに上回っていることを伝える報道も増えた。

 また、EUで中国製EVに高関税が課されること、日米欧の大手メーカーが相次いでEVの拡大ペースを落とす計画変更を発表していること、さらには、途上国では一時的にEVブームが起きても、充電インフラが未整備なことから持続性がないという予測などを挙げて、米国以外でもEVの拡大はそれほどのスピードにはならないという見方も強調される。

 では、今後の見通しは、本当のところどうなのだろうか。

 まず、中国では自動車販売全体では減少傾向が続いている。しかし、新エネ車の販売は依然として好調だ。中でもPHVの販売が急増しているが、実はEVの販売も依然として拡大している。

 本コラムで前にも書いたが、充電に必要な時間が非常に短くなっている。中国の通信機器大手ファーウェイが発表した超急速充電のキャッチコピーは「1秒1キロ」だ。60秒=1分の充電で60キロ、10分なら600キロ分の充電ができる。充電インフラは大都市ではガソリンスタンド以上の数が整備されている。

 そして、EVやPHVの価格が下がり、HVに近づいてきた。

 さらにEVは自動運転との相性が良く、自動運転機能の進化に伴い、EVの魅力はさらに高まっている。

 ファーウェイが開発した最新の自動運転システムを搭載した新車を買えば、マンションに住んでいる住人が、家にいながら、スマホで車のエアコンにスイッチを入れ、スマホで呼び出せば、駐車場からマンションのエントランスまで自動走行で迎えにきてくれる。帰宅時には、エントランスで降車し、そのまま無人で駐車場に駐車させることも可能だ。こうした機能は日々進化し、EVの魅力は加速度的に高まる。

暮らしとモノ班 for promotion
みんな大好きポテトサラダ!おいしくつくるコツから保存方法までポテサラ豆知識
次のページ
トヨタが敗北する自動車産業の未来