資本主義と倫理観は共存できるのか(写真はイメージです/Getty Images)
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哲学界のロックスター、マルクス・ガブリエル氏が去る8月28日、東京大学で講演を行った。ガブリエル氏といえば、6月に発売された『倫理的資本主義の時代』(ハヤカワ新書)が好評のドイツの哲学者。AERA dot.でも以前、本書に関するコラムを執筆した小説家・榎本憲男さんが、講演会をもとに再び資本主義論を展開する。

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「資本主義は倫理的でなければならない」

 去る8月28日(水)哲学者マルクス・ガブリエルが、 「なぜいま、倫理資本主義なのか」という題で講演をおこなった。著書『倫理的資本主義の時代』の刊行を記念しての来日のようだ。本書について、ここで短いコラムを書いたこともあり、なにより、「哲学界のロックスター」を一目みたいというミーハーな気持ちも手伝って、東大の安田講堂まで出かけていった。

 第一部はマルクス・ガブリエル氏の講演。第二部は、本講演会の主催者であるインデックスグループの代表植村公一氏の司会のもとで(経済人なのにと言っては失礼だが、実に上手なとりまとめで感心した)、哲学者の中島隆博氏と文化人類学者の小川さやか氏を招いてディスカッションがおこなわれた。以下、この講演会の模様を素描し、僕の感想をつけ加える。ただし、録音が禁じられていたため、メモを頼りにしたレポートであること、またマルクス・ガブリエル氏の講演は、同時通訳をレシーバーからイヤフォンで聴いて理解したことをお断りしておく。

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榎本憲男

榎本憲男

和歌山県出身。映画会社勤務の後、福島の帰還困難区域に経済自由圏を建設する近未来小説「エアー2.0」(小学館)でデビュー、大藪春彦賞候補となる。その後、エンタテインメントに現代の時事問題と哲学を加味した異色の小説を発表し続ける。「巡査長 真行寺弘道」シリーズ(中公文庫)や「DASPA吉良大介」シリーズ(小学館文庫)など。最新作の「サイケデリック・マウンテン」(早川書房)は、オール讀物(文藝春秋)が主催する第1回「ミステリー通書店員が選ぶ 大人の推理小説大賞」にノミネートされた。(写真:中尾勇太)

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