本日4月12日、東京・明治記念館で、全国の書店員が選ぶ「本屋大賞2016」の発表会が開催され、作家・宮下奈都(みやした なつ)さんの『羊と鋼の森』(文藝春秋刊)が大賞に輝きました。2012年に『誰かが足りない』(双葉社刊)で、第9回目本屋大賞にノミネート(7位)されていた宮下さんですが、今回、満を持しての受賞となりました。
授賞式で宮下さんは「実は『羊と鋼の森』は、初版は6500部ほどでしたので、文藝春秋の担当者からも、『そんな作品が本屋大賞を取るのは前代未聞のことではないか』と言われたほどです。私のような無名の作家の作品が本屋大賞を受賞できたのは、書店員のみなさんが応援してくれたからこそ、だと誇りに思います。私にとって今回の受賞は、勲章。この奇跡は、一生忘れないと思います」とコメント。
同作は、ピアノの調律を通じて成長していく1人の青年、外村(とむら)が主人公の物語。北海道の山奥で生まれ育った外村は、17歳の時に通っていた高校の体育館で調律師の板鳥(いたどり)の奏でる音に心を揺さぶられたのをきっかけに、調律の世界に魅せられます。その後、調律師として板鳥の楽器店で働き始めた外村は、職場の先輩や同僚、顧客となった双子の姉妹、和音(かずね)と由仁(ゆに)など様々な人々に出会い、成長。北海道の雄大な自然を舞台に、主人公の成長と周囲の人々の心情を丁寧な筆致で描写する作品です。
宮下さんは、1967年福井県生まれ。結婚後、3人目の子を妊娠中に小説を書き始め、04年に文學界新人賞佳作に入選した『静かな雨』で、作家デビュー。かねてより書店員からの評価は高く、宮下さんの初の単行本『スコーレNo.4』(光文社刊)は、Twitter上で呼びかけた1人の書店員の発言を発端に、全国の書店で同作をプッシュしようというムーブメントにより、書店員たちの「秘密結社」まで結成されたほどです。
本屋大賞は、全国の書店員が年に1度、出版業界活性化のために「一番売りたい本」を投票で選出するもので、第13回目となる今回は、「2014年12月1日〜2015年11月30日に刊行された日本の小説」が対象。1次投票には全国435書店から552人、2次投票には276店書店から、331人もの投票があったそうです。
受賞作は、第1回大賞受賞作の『博士の愛した数式』小川洋子さんに始まり、近年では、第11回『村上海賊の娘』和田竜さん、第12回『鹿の王』上橋菜穂子さんなど、過去の受賞作はいずれもベストセラーとなり、話題を集めています。
「本屋大賞2016」ノミネート10作品の順位は以下の通り。
■「本屋大賞2016」順位
1位『羊と鋼の森』宮下奈都/文藝春秋
2位『君の膵臓(すいぞう)をたべたい』住野よる/双葉社
3位『世界の果てのこどもたち』中脇初枝/講談社
4位『永い言い訳』西川美和/文藝春秋
5位『朝が来る』辻村深月/文藝春秋
6位『王とサーカス』米澤穂信/東京創元社
7位『戦場のコックたち』深緑野分/東京創元社
8位『流』東山彰良/講談社
9位『教団X』中村文則/集英社
10位『火花』又吉直樹/文藝春秋
■本屋大賞公式サイト
http://www.hontai.or.jp/