防災士の岡本裕紀子さんが行っているラジオ体操。「世代間交流」と「ゆるやかな繋がり」とで、住民の「共助」の意識を高めていく(写真:岡本さん提供)

 9月も台風シーズンが続く。災害時に自宅が倒壊や浸水などの危険性がない場合は、そのまま自宅で生活を送る「在宅避難」が推奨されている。そのために必要なのが備蓄だ。しかし、ただ備えればいいというものではない。先の岡本さんはこう話す。

「戸建ての場合にまず大切なのは、建物の上階に避難する『垂直避難』の備えに取り組むことです」

 水害が起きて大慌てで2階に備蓄品を運び上げようとしても、持っていくことができる量は知れている。普段から、飲料水(1人1日3リットルを目安に最低3日分)や食料(缶詰、レトルト食品、乾物などを最低3日分)、簡易トイレ(1人1日5~7回分を目安)などを住宅の2階以上にも分散保管しておくことが大事、という。

「『窓を守る備え』も心掛けてください。強風で窓が1カ所でも割れるとそこから台風の風が吹き込み、室内の空気圧が上がり、場合によっては屋根が持ちあげられて飛んでしまうことがあります。窓を守るのは、家全体を守る対策です。ホームセンターなどで売っている、ガラス飛散防止フィルムを活用するのがおすすめです」(岡本さん)

ラジオ体操で防災対策

 そして、特にマンションの場合は、自らの命を守る「自助」と、災害時に近所や地域で助け合う「共助」が重要となってくると話す。

「マンションの高層フロアは、停電でエレベーターが停止すると物資を地上から運び上げることが重労働になります。自助の力を高め、ことさら日ごろからの備蓄が大切となります」

 共助は、災害発生後の住民同士の助け合いや情報共有のためにも欠かせない。そのためには、「世代間交流」と「ゆるやかな繋がり」に着目した取り組みを通じて、コミュニティーを形成していくことが大切だとアドバイスする。

 岡本さんは、医師である弟の岡本充史(あつし)さんと一緒に昨年7月から、充史さんが開業する「内科おかもとクリニック」(大阪狭山市)の駐車場で基本的に週2回、ラジオ体操を開催している。

 毎回、近所に暮らす子どもや高齢者ら20人ほどが参加する。1回参加するごとにカードにスタンプを押し、スタンプが15個たまると、賞味期限の長い缶詰など防災食を贈る。

「10分程度の交流ですが、ゆるやかな繋がりが生まれます。こうした関係が、災害時に役立ちます。ラジオ体操に参加することがきっかけとなり、新たに防災対策に関心を持つ方も増えています」(岡本さん)

 水害から命と暮らしを守るためには何が必要か。それぞれの行動を通して考え、防災意識を高めていきたい。(編集部・野村昌二)

AERA 2024年9月16日号より抜粋

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