AERA 2024年9月16日号より

「たとえばフランスには『育児をすごくするパパ』を意味する“パパ・プール(めんどりパパ)”という言葉があります。日本にもそろそろイクメンのワンランク上を表す、こういった言葉が必要でしょう」

家事分担はWe主語で

 他方ではイクメン以下の男性がまだまだ多いのも実情だが、こちらはどうしたものか。自身も産後、育児をしない夫に悩んだというハラユキさんは、

「第三者がパパを育てる仕組みが必要だと思います。身内である妻から『父親なんだから』と育児を促されても、夫は素直に聞きづらい場合がある。フランスやオランダのように、育児のプロが父親に指示や指導をして責任を促すほうが効果的です」

 夫婦で家事分担を話し合うときは「We」を主語にするのもよいという。

「『あなた』や『私』を主語にするのでなく、『いま我が家はこういう状況だよね』と話したほうが、夫の当事者意識を呼び覚ましやすい。『こうして、ああして』と妻が全て決めてしまうのでなく、ヒントを示したうえで『どうすればいいと思う?』と相手が考えるように促すこともポイントです」

 ハラユキさん自身もこういった試行錯誤を続けてきた結果、夫は今や見違えるほど家事育児をするようになったと振り返る。

 社会が変わることも必須だ。著書に『ワンオペ育児』、『働く母親と階層化』(共著)などがある東京大学の藤田結子准教授(社会学)はこう指摘する。

「現状は男性のほうが賃金が高く重要な職務につきやすいため、産後は夫に主な働き手になってもらい、妻は家事育児を多くやるという夫婦戦略が選ばれやすい。やはりまずは企業における長時間労働や男女間の賃金格差を改善することが必須です」

 人々の意識も大きな障壁となっている。「最近は男性の育児が『規範』になってきたが、実践が追い付いていない」と藤田さんは話す。「男は仕事をしてお金を稼ぐべき」という意識も、男女ともいまだに根強い。

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