「天然キャラ」陣内智則
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 陣内智則は、幅広い世代に支持される実力派の中堅芸人として知られている。ただ、彼は若手の頃には抜けたところのある「天然キャラ」としても有名だった。

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「ご飯と間違えてファミコンにカレーをかけた」「と思い込んで道端にある黒いごみ袋に話しかけていた」といった天然エピソードには事欠かない。

 そんな彼の天然キャラが久々に垣間見えたのが、9月2日放送の『ネプリーグ』(フジテレビ系)だった。吉本興業の芸人養成所「NSC」の話題が出て、そこでどんな授業が行われていたのかという話になった。

 そのとき、NSC卒業生である陣内は「大阪は、発声あって、ダンスあって。あとフラミンゴがあります」と切り出した。場の空気が一瞬止まった後、同じくNSC卒業生である野々村友紀子が「(フラミンゴじゃなくて)フラメンコ」と訂正した。ここでようやく共演者や観客も陣内の言い間違いに気付き、爆笑が起こった。陣内の素のキャラクターの面白さが炸裂した瞬間だった。

 陣内は、どんな番組でも確実に盛り上げる能力を持っている。MCを務められるだけでなく、サブMCとしてサポートに回っても天下一品。明石家さんま、ダウンタウンなどの先輩芸人と歳の離れた後輩芸人の間のつなぎ役として、そつない立ち回りを見せる。

陣内智則には「天然」がある

 そんな彼は、その実力からしっかり者と見られることも多い。だが、前述の通り、陣内という人間の根底には「天然」がある。彼はただの優等生ではないからこそ、あれほど魅力的であり、あれほど重宝されているのだ。

 少し前にお笑い好きの間で話題になった「永野暴行事件」も、陣内という人間の裏の部分を象徴するような出来事だった。『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)の収録中、ピン芸人の永野が陣内にしつこく毒づいたところ、陣内が激高して永野に襲いかかった。永野の髪の毛を両手でつかんで押し倒したのだ。

 通常、この手の芸人同士のけんかは一種のパフォーマンスであり、ある程度のやりとりを経て何らかのオチがつくのが定番の流れである。しかし、このときの陣内と永野の争いは、着地点が見えないまま膠着状態となり、オンエアではそのまま終わっていた。永野は想定外の反撃を受けて激しく動揺し、おびえたようなそぶりを見せていた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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