この出来事を振り返り、陣内本人は自身のYouTubeで「本気で怒っていたわけではない」という趣旨の弁明をしていたが、真相は闇の中である。もちろん、バラエティー番組の中で芸人がやっていることなので、パフォーマンスであると考えるのが妥当ではあるのだが、それだけでは割り切れないところもあり、興味が尽きない。

 私はこの件で陣内を責めたいわけではない。むしろ、こういうところがこの人の面白いところなんだよ、と言いたい。根っからの天然であり、制御不能なところがある。どうにもならない状況で、何か変なことをしでかしてしまう抜けっぷり。それもまた陣内の魅力なのだ。

 陣内はネタ番組で「スベっていた」とイジられたり、大喜利が苦手なのに大喜利をやらされて、場を凍りつかせる回答を連発していたこともあった。そのときの「スベリ」と、そこからの「もがき」も実に見応えがあった。

 陣内智則をただの優秀な芸人だと考えるのはもったいない。彼こそは、お笑い界屈指の爆発力を秘めた逸材なのだ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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