佐川宣寿・国税庁長官(当時)の辞任などを求めてデモ活動をする市民ら(2018年2月)

まずは自民党議員が「納税」すべし

 実際、過去には確定申告のボイコット運動が起こったことがある。

 2018年2月。学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる問題で、佐川宣寿国税庁長官(当時)が公文書改ざんや破棄を指示した疑いがあることから、「国民なめんな」「納税者一揆」などのプラカードを掲げた市民が1000人以上集まり、国税庁が入る霞ケ関でデモが行われた。

「政治家や官僚が都合の悪い書類を捨てているのに、私たちにはすべての領収書を取っておいて納税しろというのか」――当時は国民の怨嗟の声が相次いだ。

 今回、国民には同じような不満が蔓延しており、河野氏の年末調整廃止論をめぐっては、SNSなどで「自民党の議員がまずは正確に確定申告をして、税金を納税すべきだ」という声も根強い。

 自民党の裏金事件をめぐっては、河野氏が所属する麻生派でも、元秘書が東京地検に「裏の口座があり、そこに裏金をためていた」という旨の供述をしていたことが、毎日新聞の報道で明らかになっている。多くの議員が裏金をつくっていた自民党が、手間のかかる納税作業を国民に強いるとなれば、反発が出るのは当然だろう。

 そもそも、国会議員は歳費(給料)とは別に調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費)が毎月100万円支給されており、議員の「第2の財布」とも呼ばれる。自民党の裏金問題が表面化したことで、国会では見直しの議論も出たが、自民党は法改正を見送った経緯がある。

「国会議員に毎月100万円支給される調査研究広報滞在費は、使途公開の義務がないため領収書は不要で、使わずに残ったとしても返金の義務もありません。いまだに現金支給されているので、外からチェックもできない。私たちに領収書を保存させて税金計算をさせる前に、まずはここのデジタル化を進めるべきではないでしょうか」(荻原氏)

 自分たちは「領収書なし」で月100万円もの経費を使える権限を持ちながら、国民には1円単位で領収書提出を求め確定申告を義務付ける……国民が納得できるはずもないだろう。荻原氏は言う。

「河野さんは裏金問題を起こした自民党議員に対して強く責任を迫る発言をしていません。まずは身の回りから襟を正すべきです。総裁選に立候補するのなら、国民が置かれている現状をもっと正確にくみ取るべきです」

 河野氏には、こうした国民の声を「ブロック」しないで聞いてもらいたいものだ。

(AERA dot.編集部・板垣聡旨)

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