「年末調整廃止」を打ち出し批判を浴びている河野太郎氏
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 自民党総裁選に出馬表明した河野太郎デジタル相(61)が打ち出した「年末調整廃止」「全国民が確定申告」という私案に批判が相次いでいる。そもそも、裏金問題で信用が失墜している自民党に対して、SNSでは「その前に自民党がちゃんと税金払え」など厳しい批判が飛び交っている。また、税務署の業務がパンクするのではという懸念も根強い。識者は「確定申告のボイコットが起きかねない」と危惧する。

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 河野氏は自民党総裁選に向けた公約で、「年末調整の廃止」「すべての国民が確定申告する仕組み」を整備すると打ち出した。実現すれば、企業がこれまで担っていた年末調整は個人が行うことになり、雑所得などを計算したうえでおのおのが税務署へ確定申告をすることになる。

 全国民に確定申告させる理由について、3日に河野氏が投稿したXでは「真に支援を必要としている人を正確に把握し、迅速に支援に繋げるためのデジタルセーフティネットをつくります」と記し、「所得情報を迅速に把握できるので、必要な人にピンポイントでプッシュ型支援を行うことができるとともに、その年の収入に応じて住民税などを決めることができます。前年より収入が大きく減ったために負担できなくなるようなこともなくなります」と述べている。

 だがSNS上では、「確定申告時の税務署の実態を知らないのか」「その前に自民党がちゃんと税金払えよ」などの声が続出している。

 経済ジャーナリストの荻原博子氏もこう指摘する。

「年末調整を会社(雇用主)が行っているのは、作業をすべて税務署に任せれば手間が大きくなりすぎるため、会社が担うべきだという前提があるからです。ただでさえ確定申告時の税務署は激務で疲弊しているのに、このまま全国民に確定申告をさせたら、税務署は破綻してしまいますよ。河野さんは、ボタンをポチッとするだけで確定申告が終わると勘違いしているのでは」

 年末調整とは1947年に始まった制度で、当時、人材不足などを理由に税務署の処理能力が不足していたことから、国が雇用主に徴税業務を義務付けさせたものだ。国が「年末調整業務を税務署が行うことは負担」と認めた背景がある。

 税務署だけでなく、確定申告をする側の国民の負担も小さくない。荻原氏はこう話す。

「申告する納税者も日々の仕事で忙しいのに、領収書をまとめたり、消費税を計算したりと大きな手間がかかります。このままでは確定申告のボイコットが起きかねません」

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