人の都合で無理な繁殖、病を招く交配、幼くても出荷、「不良在庫」を引き取る闇商売……。「かわいい」の裏側で、犬や猫たちがビジネスの「奴隷」となっている現状。そんなペットビジネスの凄惨な実態を暴いた、朝日新聞記者・太田匡彦著『猫を救うのは誰か ペットビジネスの「奴隷」たち』。本書を“教科書レベル”だという坂上忍さんが、太田さんとの出会いから動物への思いを綴った解説文を特別に公開する。
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わたしが太田さんと出会ったのは、いつだったか。
朝日新聞に変わった男がいるとの触れ込みで、動物保護をテーマにインタビューを受けたのがはじまりだったような気がする。
お会いしての第一印象はというと、クソ真面目というか堅物というか、融通が利かなそうな、笑顔を作ることすら苦手なタイプなのかなと。
ただ、わたしはそういった不器用系の方が大好物でして。わたしももれなく器用とは言い難いタイプ故、逆に親近感を覚えたのです。
なにより動物保護に関する知識と熱量の高さには、正直驚かされました。
ほんとうによく勉強されていて、なんならわたしが太田さんをインタビューしたかったぐらい。
そして親近感だけで終わらず、信頼するまでに至った理由は、彼がしっかりと怒っていたからなんです。
先進国でここまで安易に動物が売り買いされている国はありません。
盛り場のど真ん中にペットショップが当り前のように存在する現実。
酔っ払った勢いでホステスのお姉ちゃんに仔犬をプレゼントするってなに?
血統書付きの仔犬が数万円の激安価格で販売されるってどういうこと? どんなブリーダーと契約しているんですか?
まぁね、日本は誰でもブリーダーになれちゃいますから、そりゃあモラルもへったくれもないブリーダーまがいが横行するでしょ。
近親交配で乱繁殖をさせたら障害や疾患を抱えた子が生まれる確率が高くなるなんてわかりきったことなんですが、そんなことあの人達には関係ないもんね。