九州電力の川内原発。左から1号機と、2号機。南海トラフ巨大地震の「防災対策推進地域」には、四つの原発がある
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 大地震が起きるたび、緊張が高まるのが原発への影響だ。臨時情報を受けた際の措置を、講じていない原発があることも判明した。AERA 2024年9月9日号より。

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 原発は大丈夫!?

 鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市に住む50代の女性は、地震が起きるたび不安に襲われる。

 自宅から約15キロの場所に、九州電力の川内(せんだい)原発がある。川内原発1号機が運転を開始したのは1984年。当時、女性は中学生。原発に沸くまちを見ながら、明るい未来が来ると感じていた。だが、2011年3月11日に起きた東日本大震災で東京電力福島第一原発が事故を起こし、放出された放射性物質によって多くの人が故郷を奪われるのを見て、考えが変わった。犠牲になるのはそこに住む私たちだ、と。

 今年の8月8日夕方、宮崎県沖の日向灘を震源に最大震度6弱、地震の規模を示すマグニチュード(M)7.1の地震が発生した。その日、気象庁は初の「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発した。

大地震のたびに緊張

 地震が起きた時、女性は職場にいた。机が動き、ゆっくり大きな横揺れが15秒近く続いた。その後、九州電力は川内原発について地震による「影響はない」と発表した。だが女性は言う。

「影響はないと言われても、やっぱり不安」

 大地震が起きるたびに緊張が高まるのが原発への影響だ。

「30年以内に70~80%」の割合で起きるとされる南海トラフ巨大地震は、想定されるMは8~9級、最大震度は7。そのうち沖縄から茨城県まで、震度6弱以上の揺れや高さ3メートル以上の津波が想定される「防災対策推進地域」の29都府県707市町村には川内原発の他、四国電力の伊方(いかた)原発(愛媛県伊方町)、中部電力の浜岡原発(静岡県御前崎市)、日本原子力発電の東海第二原発(茨城県東海村)──の4原発が立地する。

 8日の地震の震源地に最も近かったのが川内原発だ。1、2号機が再稼働し、1号機は定期検査で止まっていたが、2号機は実際に稼働していた。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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