「3.11」の教訓は
そして、今回の地震で新たな問題が浮き彫りになった。「南海トラフ地震臨時情報」に伴う措置を川内原発と伊方原発は定めていないことが、電力会社への取材で分かったのだ。
臨時情報は南海トラフ巨大地震が発生する可能性が普段と比べ高まったと評価された場合に気象庁が発表するもので、17年に導入された。「巨大地震注意」と、より危険度が高い「巨大地震警戒」がある。
今回、巨大地震注意の発表を受け太平洋沿岸の自治体は避難所を設け、東海道新幹線は沿岸部の区間で減速するなど警戒感が広がった。それなのに、原発が措置を講じていなかったのはなぜか。理由を、九州電力は次のように説明する。
「南海トラフ地震臨時情報によらず、従来から24時間体制で防災体制を構築しております。今後も『巨大地震注意』から『巨大地震警戒』に変更になった場合においても、特別な対応は発生しません」
四国電力はこう回答した。
「南海トラフの地震については、伊方発電所からの距離が遠いことなどから、その影響は小さく、伊方発電所の耐震安全性には影響はないと考えている」
これに対し、地震と原発の安全性について警鐘を鳴らしてきた、新潟大学の立石雅昭名誉教授(地質学)は「電力事業者の原発の耐震安全性に対する考え方が非常に弱いと言わざるを得ない」と厳しく批判する。
「本来、臨時情報が発表されれば、運転中の原発は即停止すべきです。それが、導入から7年経つのに『注意』や『警戒』が発表された際にどうするか検討していなかったことは、恐ろしい感覚。福島の原発事故から何も学ぼうとしていない」
事故が起きてからでは遅い。「3.11」を忘れてはいけない。(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年9月9日号