この研究では、2000年1月1日から2019年12月31日までの期間に、25歳から84歳までの、34種類のがんと診断された約2,370万人の患者と、25種類のがんにより亡くなった約735万人のデータが抽出され、1920年から1990年まで、5年ごとに区切った出生年別のがん発症率とがん死亡率を計算し、統計解析が行われました。

 その結果、研究者らによってすでに特定されていいたがん(大腸、子宮体部、胆嚢およびその他の胆道、腎臓および腎盂、膵臓、骨髄腫、非胃噴門、精巣、白血病)に加えて、8種類のがん(胃噴門部、小腸、エストロゲン受容体陽性乳がん、卵巣、肝臓および肝内胆管、女性のHPV非関連口腔および咽頭、男性の肛門およびカポジ肉腫)が追加され、より若い世代で発症率が増加している17種類のがんが特定されることになりました。

 また、研究者らは、若い世代で発生率が上昇している17種のがんのうち、結腸および直腸がん、腎臓および腎盂がん、胆嚢およびその他の胆管がん、子宮体部がん、膵臓がん、胃噴門がん、エストロゲン受容体陽性乳がん、卵巣がん、骨髄腫、肝臓および胆管がんの10種が肥満に関連していたことが判明したと報告しています。

 なお、この論文では、若い世代で多くの種類のがんの発生率が上昇していることは、幼少期または若年成人期の発がん性物質への曝露の有病率の増加を示唆しているものの、まだ詳細は解明されておらず、今後、根本的なリスク要因を特定して対処する必要性があると結論づけられています。

 50歳未満の若い世代のがんの発症率が上昇傾向にあるという、米国がん協会による最新の報告もご紹介したいと思います。

 人口ベースの癌の発生と転帰に関する最新のデータをまとめた米国がん協会の2024年の報告[※4] 書によると、1995年から2020年の調査期間において、65歳以上の成人、50歳から64歳の成人、50歳未満の成人の3つの年齢群の中で、50歳未満の成人だけが、これら3つの年齢層の中で、この期間にがん罹患率全体が増加したのは50歳未満だけであったというではありませんか。

 また、若年成人の子宮頸がん(30~44歳)と大腸がん(55歳未満)の罹患率は毎年1~2 %増加しており、1990年代後半には男女とも50歳未満のがん死亡原因の第4位であった大腸がんが、今では男性で第1位、女性で第2位のがん死亡原因になっているといいます。

 これらの結果に対し、米国がん協会の最高科学責任者であるウィリアム博士[※5] は、「米国の人口全体は高齢化しているが、高齢者層に患者が増えているにもかかわらず、がんの診断を受ける人が若年層に移行している動きが見られる。つまり、癌の診断時期が早まっているのです」と述べているのです。

 若い世代のがんの発症率が上昇傾向にあるとなると、私も他人事だと言っていられません。がんについては解明されていないことも多く、「こうすればがんにならない!」という予防法は残念ながらありません。がんの発症要因の一つとして遺伝的要因が挙げられる一方で、若い世代で増えている一部のがんが肥満に関連していたことが分かったということは、これからの食生活や運動習慣といった生活習慣次第で、がんの予防に繋がると言えるのではないでしょうか。

【参照URL】 

[※1]https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2821163#google_vignette

 [※2]https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240717_1

 [※3]https://www.thelancet.com/journals/lanpub/article/PIIS2468-2667(24)00156-7/fulltext

 [※4]https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.3322/caac.21820

 [※5]https://www.cnn.com/2024/01/17/health/cancer-incidence-rising-report/index.html

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