成功した経営者には名言や格言がつきもの。中でも根強い支持を集めるのが、「カリスマ」と呼ばれる経営者たちの言葉だ。「経営者の言葉」はなぜ色あせずに響くのか。AERA 2024年9月2日号より。
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高度経済成長期の日本のものづくり産業を支えた代表格のカリスマ経営者といえば、パナソニックグループの創業者・松下幸之助だ。同社が創業100周年を迎えた2018年に大阪府門真市の旧本店敷地跡に開業したパナソニックミュージアムには、松下が残した「お客様大事」や「成功するまで続ける」といった代表的な30の言葉を展示したコーナーがある。これらの言葉はカードにして配置され、入館者は自由に持ち帰れるという。
同社はなぜ、ここまで創業者の言葉を大事にしているのか。新田淳館長は「パナソニックグループは創業者の松下幸之助によって確立された経営理念に則って企業活動を進めることを趣旨としています」と説明。その上で、ミュージアムの役割については、社会と従業員に向けたメッセージの発信拠点という面があると強調した。
「多くの人に松下幸之助の経営理念に触れていただき、広く社会に当社の企業姿勢をご理解いただく場としています。当社にとって歴史的意義の深い場所で、松下幸之助の歩みと言葉の数々に向き合うことで、従業員は折に触れて経営理念に立ち返ることができます」
松下に限らず、本田宗一郎、稲盛和夫、安藤百福といった日本のカリスマ経営者の言葉は、今なお若手起業家からキャリアを積んだビジネスパーソンまで幅広い支持を集めている。時代も、置かれている環境も異なる故人の言葉が、なぜ色あせずに響くのか。
「これまで労働の場で共有されてきた価値観やルールに従うだけでは通用しないと感じた時に、既成の概念を打ち破る突破口として非日常的な資質を備えた一個人=カリスマ経営者の言葉が求められるのではないでしょうか」
こう話すのは自己啓発書の歴史を研究してきた大妻女子大学の牧野智和教授だ。