木村教授が強調するのは、地球温暖化の影響で近年の台風は非常に強力になっており、今回のような台風がこれからも頻繁に襲来する可能性が高いこと、ゆえに経験則からの「自分は大丈夫だろう」という思い込みは持つべきではないということだ。

「これまでの常識は通用しない、という意識を強く持ってください。『自然環境は変わった』と認識し、自分たちの行動を変えていかなければなりません。台風後、被災地に赴いた際、『50年に一度の大雨といわれている。ならば今後の50年は大丈夫なのではないか』という地元の人々の声をたびたび耳にしました。しかし今の時代、毎年のように今回のような台風が来てもおかしくはないのです」

 こうした正常性バイアスは人間の本能のようなもので、自分でそれを認識して、行動を改めるのは簡単なことではない。だからこそ、家族や町内会など、周囲の人々で声を掛け合う体制や習慣を築いていくのが重要になるという。台風の際に外出するという人を見かけたら、決して楽観せず、強く制止してほしい。

災害を「わがこと(我が事)」化する大切さ

 もうひとつの「仕事として外出せざるを得ないケース」はむずかしい問題だ。

 台風19号が上陸した10月中旬は農作物の収穫を控えた地域も多かった。田んぼの水量の調整や防風ネットの様子を見るために外出した農業関係者は少なからず存在しただろう。

 茨城県つくば市の農家の男性(44)は「居てもたってもいられなくて大雨のなか田んぼを見に行った。危険であることも、行っても何も変わらないことも承知していたが、体が動いてしまった」とAERA dot.の取材に答えた。

 木村教授は語る。「多くの場合、そうした方々は使命感に駆られて行動しています。使命感を抱いていると身の安全について正常な判断がしづらいほか、周囲の人々も止めづらい。しかし、命の方が大事であることを改めて思い出してください」

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