山崎元『がんになってわかった お金と人生の本質』(朝日新聞出版)
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 またメディアに属する記者の感覚として、自分が取材して摑んだ「真実」は正しいという尊大な思いも問題である。結果として、長期・定額で同じ資産を買うドルコスト平均法が正しいという記事はなくならない。

 それに追い打ちをかけるのが、メディアから原稿を依頼されるFPだ。原稿依頼の声がかかると嬉しくてしようがないものだから、求められるままに原稿を書いてしまう。

マーケティングとは嘘のラッピングのこと

 私の時間があと30年ぐらいあって、起業をするとしたら、マーケティングを解毒するサービスを提供したい。マーケティングはとてもありがたがられて、ビジネススクールでも堂々と講義されているが、要するに大して価値がないものを価値を大きく見せて売るための技術の寄せ集めに過ぎない。

 マーケティングによって実態をカモフラージュしている例を挙げるなら、毎月分配金を受け取れる毎月分配型投資信託や高配当株があるだろう。分配金や配当金が多いというのは、結局ファンドの資産を取り崩してお金を配っているのであり、まるでたこが自分の足を食っているようなものである。投資家の人気集めでしかない。

 それを売る側は、「年金の代わりにおすすめ!」などと、少し考えれば素人でも嘘と分かるフレーズでラッピングしている。これがマーケティングだ。

 そんなマーケティングに費やされる経済的資源を、経済価値の整備のために用いることができれば、顧客の利益を大きくできる。そこにはビジネスとして成立する素地があるだろう。

 マーケティングの解毒は、消費者保護にもつながる。情報に疎い人を騙そうと、甘い言葉で誘う輩は今も昔も大勢いる。羽毛布団や健康器具などの伝統的なものから、仕組みの分かりにくい外貨建て保険まで商品は様々だ。

「善意の愉快犯」でありたいというのが、私の経済評論家としての願いだ。その使命は、甘い言葉で個人にアドバイスをして、不要な商品を売りつけようとする輩の商売を邪魔することである。

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