下地ローレンス吉孝さん(Shimoji Lawrence Yoshitaka)/1987年生まれ。社会学者。日本におけるミックスルーツへの差別などを研究。沖縄と米国のクオーター(写真:本人提供)
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 複数の国にルーツを持つ人たちは日々、どのような悩みと直面しているのだろうか。社会学者の下地さんらがアンケート調査を実施。そこから浮かび上がってきたものとは。

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今回の調査(https://sites.google.com/view/surveyformixedinjapan「日本における複数の民族・人種等のルーツがある人々のアンケート調査結果」)は、あくまでも回答した人たちの傾向や割合を示すものですが、ミックスルーツの人たちにとって、学校がいじめやマイクロアグレッション(偏見に基づく日常的な行動)の温床になっているとも言えることが分かりました。マイクロアグレッションやいじめ、差別を受けた場面として、学校や塾の先生などから受けたと回答したのが約40%、さらに知人や友達から受けたのが約80%と高く、学校という場の二大属性の人たちからかなりの割合で、いじめやマイクロアグレッションを受けています。

肌の色をからかわれ…いじめの内容に胸が締め付けられる

 受けてきたいじめや差別の内容には、胸が締め付けられました。上級生の男性らに呼び出されて池に落とされ、そのまま助けてもらえなかったり、髪が気持ち悪いからと車の通る道路に突き飛ばされたり。肌の色をからかわれるだけでなく、プールの授業で頭をつかまれて水に顔を押し付けられたりと、まかり間違えば死んでしまうような危険な状況に直面している人もいます。先生が積極的に攻撃する土壌を作っていじめられたということもありました。私の想像以上に、ミックスルーツの人にとって学校は深刻な場になっています。

 また、自分のルーツについて安心して話せる相手として、半数以上が「自分とルーツが近い人」「ともだちや知り合い」を挙げているのに対し、「学校の教職員」と答えたのはわずか4%。カウンセラーや医者も同様に低く、教育機関、ケアの機関、医療機関では、自分のルーツについてなかなか安心して話すことができない状況です。むしろ、学校の先生に話すとケアされるどころか、「気にしすぎ」と言われ否定されたり、逆に状況が悪化してしまったりと、何が起きるか分からず、児童・生徒にとっては不安な状態だと思います。カウンセラーに相談したにもかかわらず、逆に理解のない言葉をかけられて傷ついた人もいました。

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校則は制度化された人種差別