複数の国にルーツを持つ人とその子どもたち。日々の生活の中で無自覚な差別や偏見に直面し、苦しむケースは多い。アンケート調査から見えてきた実態とは。AERA 2024年8月26日号より。
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厚生労働省の人口動態統計によると、2022年に生まれた子のうち、父母のどちらかが外国籍の子は50人に1人(1.98%)。出生数全体が減少傾向にある中で、05年に2%台に乗って以降、ほぼ同じ割合で推移している。海外から日本へ転入してくる外国人とその子どもも増加中だ。
日本で生まれ育ったのに「日本語話せるの?」と聞かれたり、出身地を聞いて「走るのが速そう」と言われたり。周囲が無意識に発する言葉に傷つく人は多い。そんな「マイクロアグレッション(無意識の偏見・差別)」について今年3〜4月、社会学者の下地ローレンス吉孝さんらは、日本における複数の民族・人種等のルーツがある人々(ミックスルーツ)を対象にアンケート調査を実施した。
その結果、回答者の98%がマイクロアグレッションを受けており、68%がいじめや差別を、32%が不登校を経験していることがわかった。メンタルヘルス不調の割合は全国調査と比べて5・1倍も高く、多かった経験や症状は「自己肯定感の喪失・損失」(69%)、「社会への信頼感の喪失・損失」(53%)などだった【※欄外注】。
見世物にされている
「マイクロアグレッションとは、障害者やLGBTQ、人種・民族的少数者など社会におけるマイノリティーの人に向けられる『偏見や先入観がかいま見える言動』のこと。相手をほめたつもりでも、無意識の偏見が出てしまうことがあります」
こう話すのは、自身もドイツと日本にルーツをもつ著述家のサンドラ・ヘフェリンさんだ。
「たとえば、よくハーフの子どもは『何々語でしゃべってみて』と言われたり、その国の名物料理の話ばかりふられたりする。そんなふうに、その子の『外国』の部分にばかりスポットをあてるのはやめてあげてほしいですね。自分は日本にもルーツがあるのに外国人扱いされていると感じることもあるし、『見世物にされている』と感じる子もいる。それにハーフだからといって必ずしも両方の言語を話せるわけでもありません」