「推薦人でこれほど苦労するとは…」
高市氏が意識しているのは小林氏だ。小林氏は、21年の総裁選では高市氏の推薦人だった。高市氏と政治信条が近く、保守系の支持基盤がかぶる。そのため高市氏の支援者が小林氏に流れ、高市氏が総裁選に出馬するための推薦人確保が思うように進まなかった。
高市氏を支援するA議員はこう話す。
「高市氏から以前、『(勉強会などで応援してくれる議員は)全部で40人を超えた。前回の総裁選で推薦人に入ってくれた以外の人もかなりいます』と自信を見せていた。前回の推薦人を基礎にして戦略を進めていますが、正直20人の確保に苦労しています。推薦人でこれほど苦労するとは思っていなかった」
小林氏の応援団に加わった鈴木英敬衆院議員、吉田真次衆院議員(ともに安倍派)、高木宏寿衆院議員(二階派)は高市氏の勉強会に出席したこともあり、
「うちのほうに来てくれると、高市氏も計算していたようだ」(A議員)
山田賢司衆院議員(麻生派)も高市氏に近いとみられていたが、小林氏の応援団になった。
「安倍元首相の薫陶を受けた高市氏が保守としてずっと格上だが、小林氏のスピードに受け身になっている感じだ」(A議員)
とりわけA議員が、「小林氏は若手なのに老獪(ろうかい)だ」と天を仰ぐのは、吉田氏が小林陣営に流れたことだ。
吉田氏は安倍元首相の地盤、衆院山口4区の後継者。昨年4月の補欠選挙では、安倍元首相の昭恵夫人が全面的に支援をして当選を果たした。A議員が嘆く。
「吉田氏は安倍元首相の思いを遂げたいと国政に打って出た。高市氏をバックアップしていた安倍元首相の意向もあるので、総裁選ではこちらに来てくれるだろうと思っていた。それが小林氏に走ってしまった。吉田氏の横には常に、安倍元首相の名代のように昭恵夫人が寄り添っていたこともあり、党内に『安倍元首相はもう高市氏ではない』という印象が広がっている」
それでも高市氏は推薦人の確保のめどがつき、近く総裁選出馬を表明する見込みだという。