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バレーボールのブラン監督は、「データ」を武器とした。戦術の立案にあたって、日本代表には7人の分析担当がおり、日本の選手たち、そして相手を丸裸にする作業が日夜行われた。ブラン監督は言う。
「バレーボールにおいて身長は武器です。ただし、ネットを挟んでいるので決定的な要因とはなりません。相手の2メートルを超える選手は、横の動きには弱いかもしれない。それを明らかにし、選手たちに戦術をインストールすれば、日本は十分に戦えるのです」
世界トップクラスの知恵が、石川祐希、セッターの関田誠大、リベロの山本智大を輝かせた。ブラン監督が明らかにしたのは、これまで日本には能力のある選手がいながらも、適切な分析、戦術の立案が不十分だったということだ。ブラン監督は今回で勇退するが、その戦い方は未来の航海図になるはずだ。
そしてトムとフィリップに取材して感じたのは、ふたりとも「諦めの悪い人」ということ。負けを受け入れられないのだ。その諦めの悪さが、感動的な戦いの源泉だった気がしてならない。(スポーツジャーナリスト・生島淳)
※AERA 2024年8月26日号より抜粋
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