横山聖哉選手(オリックス・バファローズ)(撮影/写真映像部・馬場岳人)

 しかし松商学園との決勝。1−1の八回表、1死一、二塁のピンチでショートからマウンドへ。自己最速となる149キロをマークしたが、死球をはさむ3連打を浴びて12球で降板、仲間の救援を仰いだ。

「練習試合とかでは投げることもありましたが、普段はピッチャーの練習はまったくしていません。それでも自信はあったのですが、決勝の舞台の雰囲気で、思うように投げられませんでした」

 1−4でベンチに戻り、意気消沈していると、ナインが「まだ負けてないぞ」と励ましてくれたという。

 その裏、チームが一丸となる。6本の長短打で6点を挙げる大逆転。5番・片平結絆の逆転2ランを、横山は最後まで見ていられなかった。

「入ったときにヤバいと思って……。ベンチ裏に行って泣きました。チームワークも最高でした」

 甲子園では土浦日大(茨城)にタイブレークで初戦敗退したが、やれるだけのことをやったので悔いも涙もない。8月半ばに初めて「プロ一本に絞りたい」と、父親に打ち明けた。

 オリックスでは吉田正尚(現・レッドソックス)が最初につけていた出世番号の「34」を託された。

 早くも5月24日に1軍に昇格し、4試合に出場。西武のエース・高橋光成からプロ初安打を放っている。

「ヒットの前に空振りしているんですが、そのフォークには驚きました。『来た!』と思って振ると『消えた!』って感じでした」

 それでも内角低めにうまくバットを合わせ、快足を飛ばして一塁内野安打。並の高卒ルーキーではない。

(守田直樹)

※AERA増刊「甲子園2024」から
 

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