「ポンコツズイ」とは、自身の体について評した著者の造語。33歳のときに100万人に5人の確率で発症する血液の難病にかかった女性の、ちょっと変わった闘病ドキュメンタリーだ。
 著者はアパレル業界のフリーランス。仕事先の社長に緊急入院を告げた際は親身に心配され、病室で仕事を続けた。だが、ギャラの振り込みについて問い合わせた途端、「俺に色々と面倒を見ておいてもらいながら、どのツラ下げてギャラが足りないなんて言えるんだ」と罵倒され、逆に仕事の損金を引かれる。頼みの兄からは、まさかの骨髄移植のドナー拒否。父親はドラマの父を演じている風だし、母親は孫の世話で忙しく、若い担当医の点滴の手つきに不安は増す──。
 白血病にかかった女優気分にハマりたくともさせてはもらえず、ときにコミカルに病院内のやりとりを綴っていく。
 感情豊かでありながら、冷静で詳細な筆致ゆえに、本を閉じる頃には「特発性再生不良性貧血」という難病や患者への理解が増すことはまちがいない。

週刊朝日 2016年3月18日号

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