「更新制」は閣議原案から削除

 医師免許は医学部の卒業資格を得て、国家試験に合格すれば取得できる。その後、2年間の研修を経れば、基本的に麻酔科と歯科以外、任意の診療科を標榜して開業できる。そして、一度取った医師免許は、5年ごとに更新が必要な「専門医」資格のほかは、更新する必要はない。

 実は、医療と医療従事者の質の確保という観点から、医師免許に「更新制」を導入するかどうかの議論は過去に行われ、2005年には閣議案に盛り込まれる予定だった。だが、「医師の質の担保と更新制の導入は関係ない」などと複数の議員から反対意見が出て、原案から削除された。

定年制「設けるべきでない」45%、「どちらとも言えない」44%

 医師らはどうとらえているのか。

 AERAが医師向け情報サイト「MedPeer(メドピア)」の協力を得て、医師676人に働き方改革についてオンラインアンケートを行ったところ、「医師免許に定年制を設けるべきだと思いますか?」という質問に対し、「定年制を設けるべきではない」45.3%、「設けるべき」10.4%、「どちらとも言えない」44.4%という回答だった。

 多かったのは、地域医療を懸念する声だ。

「地方では医師不足が明らかであり働ける人には働いてもらった方が良い」(40代 勤務医 小児科)

「定年制を採用できるほど、医師や医療従事者の数が足りているとは到底考えられない。現状でそんなことをすれば、日本の医療は成り立たなくなる。僕たちも実際は適切な時期に引退したいが、現状を見過ごせないでいる」(60代 勤務医 一般外科)

「ある一定以上の年齢を超えると判断力が鈍ると思うが、開業医などではそういった70前後のドクターによってなんとか賄われているところが大きい」(40代 勤務医 放射線科)

「医師が不足している地域がある以上、高齢のアルバイト医師にも診療に貢献してもらわないと、地域医療の崩壊が起きる」(30代 開業医 眼科)

「更新」の必要性を訴える声もあるが…

 「更新」の必要性を指摘する声もあった。

「定年はいらないと思うが、医学・医療の発展発達についていくための免許の更新はなんらかの形で行うべき」(50代 勤務医 循環器内科)

「若くても、年寄りでも、知識がなくてひどい医師がいるので、定期的に試験をして、レベルが維持できていない医師は、医師免許を剥奪すればよいと思う」(70代 勤務医 アレルギー科)

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地域医療は高齢医師が支えている