有事の時のゴールド買い、景気悪化に備えての債券買いという言葉を聞くことがありますが、社会的な異変に対するそれぞれの資産の強みを示した言葉でしょう。私は、この資産分散こそが、突発的なリスクに対して投資家が出来る最大の防御だと考えています。
長期分散という言葉にモヤモヤする理由
では、長期投資はどうか? 私がモヤっとするのはこの言葉なのです。ここでいう長期投資とは、毎月定額でコツコツと投資をして、時間分散をしながら投資をしていくドルコスト平均法のようなイメージを指しています。
なぜ、モヤっとするかといえば、長期投資は必ず花開くかのような言い方がされることが多いからです。というのも、時間分散が資産運用において有効かどうかは、投資期間を通して投資対象の資産が必ず正と負を交互に繰り返巣という状況(=平均回帰性)を維持することが前提になっているからです。しかし、全ての資産価格が長期間にわたって平均回帰性を持っているかは、私が見る限り学術研究においても解明されていません。
このようなことを書くと、何を言っているんだ!アメリカ株はいったんは下がっても上がり続けているし、それを繰り返しているじゃないか!日本株も戻ってきたじゃないか!といわれそうですよね。しかし、たかだか100年弱の話に過ぎないじゃないかと、私は思ってしまうのです。
ノーベル経済学賞を受賞したマーコウィッツの苦言
こうした苦言は、私個人の戯言に聞こえるかもしれません。しかし、プロの投資家も警鐘を鳴らしています。著名投資家であるウィリアム・キンローたちの著書「誤解だらけのアセットアロケーション: 実務家のためのガイド」において、長期で投資をすることが本当にリスクを小さくするかについて疑問を呈しています。また、ノーベル経済学賞を受賞したマーコウィッツの言葉を引用しながら、その理由についても触れています。投資タイミングがずれるということは、その時々で計算される理論価格(≒評価)そのものも変化しているので、そもそも分散と言えるのかということです。