上皇ご夫妻は、二人で庭の散策などを楽しんでいるという(宮内庁提供)
上皇ご夫妻は、二人で庭の散策などを楽しんでいるという(宮内庁提供)

率直かつ鋭い発言

 だから、陛下。勝手ついでに呼びかける無礼を、お許しいただきたい。佳子さまの誕生日に写真だけはもったいないです。

 佳子さまといえば19年、大学卒業の際の文書回答「私は、結婚においては当人の気持ちが重要であると考えています。ですので、姉の一個人としての希望がかなう形になってほしいと思っています」が有名だ。が、これ以外にも率直かつ鋭い発言がたくさんある。21年10月「国際ガールズメッセ100周年記念式典」に寄せたビデオでは、ジェンダーギャップ指数120位という日本の現状を「とても残念なことです」と述べた。

「今後、ジェンダー平等が達成され、誰もがより幅広い人生の選択肢を持てるようになることを、自らの可能性を最大限生かす道を選べるようになることを、そしてそれが当たり前の社会になることを切に願います」

「結婚観」ばかり報道

 佳子さまの明るい声を聞いていると、その日が遠くないと思えてくる。今日的なテーマもためらわず、率直に希望を持って語る。「令和の報道官」に求められる資質そのものだろう。

 そしてもう一人、忘れてならないのが愛子さまだ。3月、大学の春休みに合わせて記者会見が開かれる。アエラ(21年12月20日号)に書いたように美智子さま譲りの文章力を持つ愛子さまの言葉、とても楽しみだ。

 そして今年の誕生日にも、会見を開いてほしい。同じ「天皇の長女」である黒田清子さんは1990年、21歳の誕生日に合わせて初の記者会見に臨み、92年も大学卒業の前日に会見した。以後、誕生日が来るたびに宮内記者会からの質問に答える文書を公表してきた。

 当初は、そこで語られた「結婚観」ばかりが報道されていた。失礼な話と思うが、清子さんが答え続けたのは「言葉の人」美智子さまの娘だからだろう。清子さんの女性皇族観が報道されたのは02年、33歳の誕生日だった。「将来的にその立場を離れる可能性がどうしても念頭にあるため、中途半端に投げ出してしまうことのないように継続的な責任ある立場に就いたりすることは控えてきたということはあるかもしれません」。女性皇族という立場の困難さが凝縮された言葉だと思う。

 それから20年。愛子さまは自分の、皇室の、今を、未来を、どう語るのか。佳子さまと二人、語り続けてほしい。お二人の報道官。期待しかない。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2022年1月17日号

著者プロフィールを見る
矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

矢部万紀子の記事一覧はこちら