この年の3年生のメンバーでNPBに進んだのはエースの高山優希(元・日本ハム)だけだったが、古寺宏輝(現・Honda本)、永広知紀(現・明治安田)、吉沢一翔(現・大阪ガス)、中山遥斗(現・三菱重工East)、三井健右(現・大阪ガス)が現在も社会人野球の強豪でプレーしており、力のある選手は非常に多かった。また敗れた相手の関大北陽のエース、清水寛は決して注目されていた投手ではなく、それでも中山のホームランによる1点に抑え込まれて1対2で敗戦となったのだ。改めて一発勝負の怖さを思い知った年代だったと言えるだろう。ちなみに大阪桐蔭が夏の大阪大会でベスト8に残れずに敗退したのはこれが最後である。

 そして記憶に新しいのがやはり昨年の世代になるだろう。チームの大黒柱はエースの前田悠伍(現・ソフトバンク)で、1年秋、2年秋と明治神宮大会で史上初となる連覇を達成。2年春に出場したセンバツでもチームの優勝に大きく貢献している。しかし3年春のセンバツ以降は調子が上がらずに公式戦で登板を回避。夏には何とか間に合ったものの、決勝の履正社戦では福田幸之介(現・中日)との投げ合いに敗れている。ちなみに前田はその後に行われたU18W杯ではエースとしてチームを初優勝に導いており、改めてその能力の高さを示した。それだけに、3年春から夏にかけて万全の状態で投げる姿を見たかったという声も多いのではないだろうか。

 こうして見てみると夏の甲子園出場を逃したチームでもその後活躍している選手は多く、改めてそのレベルの高さがうかがえる。また激戦区の大阪にあって、最初に春夏連覇を達成した2012年以降は3年連続で夏の甲子園出場を逃したことがないというのも見事という他ない。この夏も強さを発揮しているが、秋以降もどんなチームを作ってくるのかにぜひ注目してもらいたい。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。