AERA 2024年8月5日号より

「スタッフの皆さんが愛情を持ってワンちゃんに接し、里親を探している姿に胸を打たれて、この人たちにお任せしようとすぐに決めました。遺言書をつくり終えた後は、清々しいというか、私の人生でできることを全てやり終えたという安心を感じています」

 黒瀬さんのように遺産の全部または一部を、社会貢献団体や自治体などに寄付することを「遺贈寄付」という。遺贈寄付の普及を目指す「全国レガシーギフト協会」理事の齋藤弘道さんは、こう説明する。

「人が亡くなる時に財産を完全にゼロにすることは難しく、少額であっても何らかの財産が残ることが多いです。その中から、遺言や契約によって寄付をすることを『遺贈寄付』と呼んでいます。それとは別に、自身が引き継いだ相続財産から寄付することも遺贈寄付に含めます」

寄付は少額からでOK

 遺贈には、不動産なども含めた全財産、またはそのうちの一定割合を寄付する「包括遺贈」と、財産を具体的に指定する「特定遺贈」がある。

 包括遺贈は負債があった場合にそれも同時に引き継がれるなどのリスクがあるため受け入れている団体が限られ、生前から綿密なやり取りが必要だが、特定遺贈、特に現金の場合は遺言で金額と寄付先を指定すればよく、比較的簡単に寄付できる。正式な遺言書をつくることが望ましいが、エンディングノートなどで家族に伝えることで、相続した家族に寄付を実行してもらうことも期待できる。

「よく、『そんなに余裕がないから寄付なんてできない』という話を聞きますが、遺贈寄付は自身の死後に残ったお金からするものなので、今の資産状況や今後の生活資金に影響されずに寄付できます。例えば『預貯金の10%を○○に遺贈する』と指定しておけば、大半をお子さんなどに継がせたうえで一部を遺贈することも可能ですし、たとえ金額が小さくても立派な遺贈寄付です」(齋藤さん)

 遺贈寄付は死後に寄付が実行されるため、お金がどう使われたのか、自分が願った社会課題の解決に役立ったのかを知ることはできない。

AERA 2024年8月5日号より
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