近鉄バスの担当者が説明する。
「目に見える実害があるわけではなく、何がダメ、と書くことはできないので、お客様の常識の範囲内にお任せしている状態です。皆さまに快適に過ごしてほしいため、出発前のアナウンスなどで他の席への配慮をしていただくよう呼びかけています。特に、今は外国の観光客の方が増えて、日本語だけでは伝わらなくなってしまっているので、英語でのアナウンスを流すなど、注意を促しています」
新宿発着を中心に運行している京王バス(本社・東京都府中市)の担当者も、
「においのトラブルの事案はあります。多いわけではありませんが、ファストフードの強いにおいが気になる、というご相談は受けます」
と話す。
1人席でもにおう
やはり、食べ物のにおいをめぐる“トラブル”は各社であるようだが、たとえば、席が1人用で独立している場合はどうだろうか。
同社の担当者は、
「カーテンに仕切られた1人用の席でも、におってきてしまうという事例はありました」
と振り返る。対策としては、
「乗務員からの周知を徹底することです。こちらからのお願いなので強制力をもってということはしません。あくまで、周りに配慮しましょう、という意味で、お願いとしてお伝えしています」
とのこと。
しかし、においにどう感じるかは個々人によってそれぞれ。どのように考えたらいいものだろうか。
においと迷惑行為について詳しい金城学院大学の北折充隆教授がこう話す。
「具体的に何を食べてはいけないという明示は、非常に難しいです。ルールというのは明文化が前提ですが、迷惑行為は『不快に思うかどうか』が基準ですので、この二つがズレることは当然あり得ます。ほとんどの人はそういうことは理解しているのですが、『そんなルールはない』などと、身勝手な主張をする人というのはいますので、明示が難しいのです」