パリ五輪開催第3日目は日本はメダルラッシュだった。柔道男子66キロ級で、阿部一二三が五輪連覇を達成。スケートボード女子ストリートで、吉沢恋が金メダルに輝き、赤間凛音が銀メダルだった。フェンシング男子エペ個人では、加納虹輝が優勝し、フェンシング個人競技で日本勢初の金メダルとなった。競泳男子400メートル個人メドレーは、18歳の松下知之が銀メダルに輝いた。29日(日本時間)の注目競技は体操男子団体。体操・橋本選手にまつわる過去の記事を振り返る(「AERA dot.」2024年7月20日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)。
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世界の国・地域から約1万人もの選手が参加するパリ五輪。多くの試合が行われるが、特に「体操」のライバル決戦は見逃せない。パリ五輪を特集したAERA 2024年7月22日号より。
体操男子、個人総合での連覇。その期待が高まっているのが、橋本大輝だ。
19歳で出場した東京五輪では、個人総合と種目別鉄棒の2種目で金メダルを獲得。橋本の魅力は、鉄棒のダイナミックな演技に代表されるように観客を魅了しつつも、足先まで美しく見せようとする繊細な演技だ。大技と繊細さの両立。彼の体操に向き合う姿勢は、まさに「体操ニッポン」の正統な後継者といえる。
しかし、世界には橋本のライバルがいる。中国の張博恒だ。
東京五輪の翌年、22年にイギリスのリバプールで行われた世界選手権の個人総合では橋本が金メダル、張が銀メダルとなったが、この時は橋本が床運動、あん馬で張の点数を上回り、張はつり輪、平行棒で橋本の上を行った。跳馬と鉄棒は同点。ここしばらく、世界の体操界はスペシャリストの時代となり、6種目を満遍なくこなせる選手は少なくなっているが、橋本と張は共にオールラウンダーであり、まさに好敵手と呼ぶにふさわしい。パリ五輪までこのふたりの戦いが続いていくと思われていたが、23年は橋本と張にとってすれ違いの年となった。
前年の直接対決はなし
橋本はベルギーのアントワープで開かれた世界選手権で団体、個人総合、鉄棒の3種目で金メダル。しかし張は同時期に地元の杭州で行われたアジア大会を優先し、橋本不在のなかで張が個人総合の金メダルを獲得した。
つまり、五輪前年の直接対決は実現せず、パリ五輪は橋本と張にとっては雌雄を決する舞台になる。おそらくひとつのミスがメダルの色を分けるに違いない。(スポーツジャーナリスト・生島淳)
※AERA 2024年7月22日号より抜粋