パリ五輪は26日午後7時30分(日本時間27日午前2時30分)から市中心部のセーヌ川を舞台に開会式が行われ、17日間の熱戦が幕を開けた。東京五輪で「テカテカ」の旗手を務めたトンガ王国の選手は、パリ五輪の出場は叶わなかった。そんな五輪にまつわる気になる過去の記事を振り返る(「AERA dot.」2021年7月30日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)。
* * *
東京五輪の開会式でひときわ輝きを放った海外選手といえば、上半身裸の民族衣装で行進したトンガ代表のピタ・タウファトファ選手。ココナッツオイルで美しい筋肉をキラキラにテカらせ、堂々と闊歩する姿は、お茶の間に興奮をもたらしてくれた。
トンガ王国はニュージーランドの北東に位置する人口10万人ほどの島国。国土は対馬くらいの広さしかない小さな国だ。
実は、トンガと日本の縁は深い。ラグビーが盛んで、日本へラクビー留学する若者も。トップリーグなどにも主力選手としてトンガ人選手が在籍している。2019年のラクビーワールドカップでトンガ出身選手が日本代表として活躍したことは記憶に新しいだろう。ラグビー日本代表に初めて外国人選手として入ったのがトンガ人だった。
その一人、元ラグビー選手のシナリ・ラトゥ(55歳、日本に帰化した現在はラトゥ・ウィリアム志南利)さんは、五輪開会式でのタウファトファ選手の身体を張った入場シーンを温かく見守った。ラトゥさんは高校卒業後に大東文化大学に留学。在学中に日本代表に選ばれ、その後も日本にとどまってプレー。ラクビーを通して日本とトンガの懸け橋となってきた。
「目立ちたいという気持ちもあるだろうけど、トンガを世界に知ってもらうにはいい」
とラトゥさん。狙い通り(?)、注目を浴びたタウファトファ選手。その後、自身のSNSで、開会式に臨む様子を短いセルフ動画にして配信。ココナッツオイルを身体に塗り、にかっと白い歯を見せ、「自分でも何をしているのかわからない(笑)」とコメントしていた。キラキラの正体であるココナッツオイルは、ブラウン系でラメが入っているもののようだ。
ちなみに、タウファトファ選手が腰に巻いていたスカートは伝統衣装で、トンガ人ならだれもが持っているという。ラトゥさんによると、キリスト教徒の多いトンガでは教会に行く際に、現在でもこの伝統のスカートを巻く習慣があるそうだ。
「礼拝や王族の祭事、結婚式のときにも、みんな腰に巻きます。私は1985年2月に初来日したときに、この伝統衣装のスカートを巻いて成田空港に降り立ちました。南太平洋の熱帯とは真逆の気候で、あまりの寒さに震えましたが」