ベルクすねおり店の各レジに設置されているイス。待機しているときに座っている従業員が多いという(写真:編集部・木村聡史)
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 働き手不足が深刻になるにつれ、雇う側は従業員を確保しようと職場環境の改善に動いている。以前は立つのが当たり前だったレジでの接客を座ってもできるようにイスを導入する会社も。「働き手が神様」の意識が浸透し始めている。AERA 2024年7月29日号より。

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 首都圏と北関東で141店舗を展開するスーパー「ベルク」。7月中旬、「ベルクすねおり店」(埼玉県鶴ケ島市)のお昼どきは多くの客でにぎわっていた。

 各レジカウンターに置かれているのは黒いイス。レジ打ちをしている従業員は立ったり、座ったりさまざま。イスは高さを調整できるので、少し高めにして座るというより寄りかかっている人もいる。

「お客様がレジに並んでいない『待機』のときに座っている人が多いです」

 そう話すのは、自身もレジ打ちを担当しながら、従業員の指導にもあたる川越エリアトレーナーの戸口真美さんだ。長時間立ちっぱなしでの接客は疲れも大きく「とくに腰痛を訴える人がいましたね。ときどき座れるだけでだいぶ楽です」。

 ベルクでは昨年12月、すねおり店で初めてレジにイスを設置した。現在は計8店舗で、各店に6台から8台ほどある有人レジにイスを設置。今月中にさらに2店舗で設置する予定だ。

批判的な反応なし

 ヨーロッパや韓国など、海外で「座ってレジ」はめずらしいことではない。加えてコロナ禍でリモートワークなど多様な働き方が生まれる中で、「座ってもいいんじゃないか」という発想が生まれたと、システム改革部マネージャーの丸山将弘さんは振り返る。

「7、8時間立ちっぱなしもある仕事。疲労していたのではお客様への笑顔も出ない。従業員の負担軽減も理由でした」

 批判的な反応はほとんどないという。ほぼ毎日買い物に訪れるという女性(65)は「座ってても全く気にならない。今までなんで立ったままだったんだろう、と思うくらい」と話す。

 ベルク以外にもディスカウント店「ドン・キホーテ」の一部店舗などで試験導入が進みつつある。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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