また大城も昨年はキャリアハイとなる119安打、16本塁打の活躍で2度目となるベストナインを受賞したが、今年は打率1割台と低迷。5月8日には登録抹消され、二軍調整となっている(5月31日に一軍復帰)。ただ、故障をきっかけに成績を落としている木下に比べると、阿部慎之助新監督の方針で起用が減っている大城の方が、他球団からの評価は高いと思われる。球界全体で“投高打低”の傾向が強くなっていることから、打てる捕手の価値は高まっていることからも、もし大城がFA宣言となれば、争奪戦となる可能性は高いだろう。

 ここまでは苦しんでいる選手を紹介したが、しっかりと成績を残している選手も確かに存在している。それがともに中継ぎの高梨雄平(巨人)と酒居知史(楽天)の2人だ。高梨は昨年自己ワーストの防御率4点台と少し不安定な投球も目立ったが、今年は見事に復活。ここまで18試合に登板して1勝、11ホールド、防御率0.68と見事な成績を残しているのだ。

 一方の酒居も2022年にはわずか1ホールドと成績を落としたが、昨年は再び成績を上げ、今年もここまでチームトップの15ホールドとブルペンには欠かせない存在となっている。高梨は国内FA権を取得した4月18日に巨人への愛着を示すコメントを出しており、まずは巨人との交渉を優先すると思われるが、それでも貴重な左の中継ぎだけに注目している球団もあるはずだ。また高梨、酒居ともに人的補償の発生しない年俸Cランクの選手と見られており、その点でも市場価値が高まることも十分に考えられるだろう。

 メジャーの場合はオフにFAとなる年に大活躍を見せて大型契約を勝ち取るケースも少なくない。今年は今のところ苦しんでいる選手は多いものの、自身の価値を高める絶好のチャンスだけに、この後のシーズンでの奮起に期待したい。(文・西尾典文)

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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