日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は日本では聞きなじみのない「パリ五輪のコンドーム配布の意義」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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7月26日から、2024年パリオリンピックが始まりますね。パリ五輪では、オリンピック選手村の選手村において、アスリートの身体的、精神的な健康の両方に取り組む(※1)ことが発表されています。
例えば、専門医やMRI装置、充実した品揃えの薬局までをも完備したクリニックやの設置です。なんと、1日あたり600人から700人もの患者を治療できる規模のクリニックだといいます。
また、オリンピック史上初のメンタルヘルスに特化したスペースが設置されるほか、アスリートを対象としたいじめサポートを提供する取り組みなども行われる予定となっています。パリ五輪ファーストエイドコーディネーターのダラール氏(※2) によると、「ソーシャルメディアは、選手にとって勝利の際の励みになる一方で、特に競技に負けてしまった場合、体型や体重などに関連した性差別的または人種差別的なコメントなど、残酷になりうる」とし、ネットいじめに関する啓発キャンペーンは選手を対象に行うことになるようです。
さらに、パリ五輪が行う「快楽と同意を支持する包括的な性的健康キャンペーン(※3) 」の一環として、7月と8月の五輪期間中、約1万4500人の選手とスタッフが滞在すると予想されるオリンピック村に、男性用コンドーム20万個、女性用コンドーム2万個、オーラルダム(※4)(※オーラルセックスの際に口と膣または肛門の間のバリアとして使用される、薄くて柔軟なラテックスまたはポリウレタン性の避妊具)1万個も用意される予定です。こうした性健康啓発キャンペーンに加えて、選手のために会場内に性健康検査センターを多数設置することも発表されています。