AERAの連載「2024パリへの道」では、今夏開催されるパリ五輪・パラリンピックでの活躍が期待される各競技のアスリートが登場。これまでの競技人生や、パリ大会へ向けた思いを語ります。
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「競泳界に新星──」
3月のパリ五輪代表選考会。女子100mバタフライ決勝で、17歳の平井瑞希は、同種目の日本記録保持者の池江璃花子をかわして56秒91で優勝した。まもなく初めての五輪の舞台に立つ。
選考会後も、6月の神奈川県高校総体で56秒33と0秒58も短縮。今年2月に行われた世界選手権にあてはめると2位相当の好タイムでパリへと弾みをつけた。平井自身も「スタートとターンが課題なのですが、そこが少しずつよくなっているのを実感しています」と自信を深めている。
スタートとターン動作を水中撮影してもらった動画を、パソコンやスマホ画面で何度も見返しながら練習に取り組んでいる。
「(動作を)変化させたことによる記録との相関というか、効果があるので、自分の課題としてさらに落とし込みたい。そうすれば少しずつ記録は縮まると思う」
メダルや順位よりも、数字と向き合う姿勢が伝わってくる。五輪の目標記録は55秒60。日本記録(56秒08)を飛び越え、55秒62のアジア記録更新を見据えている。
実は平井にとってパリ五輪はひとつのプロセスに過ぎない。なぜならば、「世界新記録」という壮大な目標があるからだ。まだ地区大会に出場する程度だった7歳。小学2年生のときだ。父の太郎さんが「何かの刺激になれば」と買ってきた水泳専門誌についていたポスターに目を奪われた。
「海外の世界記録保持者がズラリと並んだ写真で、すごくかっこ良かった」(平井)というポスターに、こう書いた。
「おとなでせかいきろくをだすために いまやることは はやい人のおよぎを1つずつみにつける」