※写真はイメージです (GettyImages)
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 60歳以上の3割が「めまい」や「ふらつき」を経験しているという。原因不明で治療薬が存在しないこともあるが、そんな人でも実践できる「めまいリハビリ」に今、普及の機運が高まっている。ジャーナリストの斎藤貴男さんがその現状を調べた。

【図を見る】「めまいリハビリ」の3パターンはこちら

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 朝、目が覚めたら、天井がぐるんぐるん回っていた。どうにか体を起こしたものの、立ち上がれない。回転性の凄まじい「めまい」。

 視界に何かが入るだけで、激しい吐き気に襲われた。私(当時64歳)は目を瞑り、匍匐(ほふく)前進でトイレに到着。だが用を足すことはできなかった。

 嘔吐が止まらない。便器に突っ伏して家人を呼び、病院に緊急搬送された。

 昨年11月某日。

 吐き気止めや抗不安薬の点滴をガンガン打たれた。車いすで院内をぐるぐる回り、CTや聴力の検査をいくつも受けた。

「脳の異常はない」「眼振が強いな」。医師たちの声が途切れ途切れに聞こえる。

 ああ、またか……。

 朦朧とする意識の下で、10年前の記憶が蘇った。ソファで寝転んでいて突然、今回同様の大発作に襲われた。日帰りの点滴で一旦は収まったが、その後もめまいは頻発。ちょっと疲れたり、寝不足や二日酔いになると、もうヤバくなる感じがつきまとった。講演の途中で目が回り始め、演台にしがみついて話を続けたことも。

 今回は3日間の入院を余儀なくされた私は、帰宅するや、ある行動に出た。「めまいリハビリ」である。

【1】顔の真正面に腕を伸ばし、親指を立て、視線をそこから動かさないで、首を左右水平に20回ほど振る。

【2】親指を横に倒し、同じ要領で、今度は首を上下垂直に20回ほど振る。これらを2、3度繰り返す──(以上、座位による頭部運動訓練)。

 私には確信があった。この「めまいリハビリ」を朝昼晩の1日3回、しばらく続ければ大丈夫。外出も、根を詰める原稿書きも怖くなくなる、と。

 10年前がそうだったからだ。病院で処方された内服薬をいくら飲んでも効かない。そんな状態が半年余りも続いた頃、ようやく巡り合った五島史行(ごとうふみゆき)医師(53)の指導を受けたのである。

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