で、ここ2、3年は、ほとんどサボりっぱなしだった。揚げ句の果てに、またぞろめまい地獄に陥ったという次第。
前後したが、当時も今回も、私に下された診断は、片側の「前庭神経炎」だった。内耳にある三半規管と耳石器が感じ取る平衡感覚を脳に伝える神経が、炎症を起こすと発症する。原因はウイルス感染や内耳の血流障害、過剰なストレス等だとされるが、はっきりしたことはわかっていない。
■60歳以上の3割 めまい等を経験
耳鼻科医たちの話や文献等を総合すると、めまいの多くは、こうした前庭に関わる障害に起因しているという。めまいリハビリの対象には、この他に良性発作性頭位めまい症、メニエール病(疑いを含む)、めまいを伴う突発性難聴、片頭痛関連めまい、ハント症候群(帯状疱疹ウイルスによる感染)などの病名と、加齢性平衡障害が挙げられ、いずれにも一定の効果があるとされる。私の前庭神経炎は、中でもド真ん中の疾病だったのだ。
なお当然のことながら、脳の損傷に伴うめまいは、これでは改善されない。新型コロナウイルス感染症の後遺症としてのめまいについても、現状では特段の報告がないようだ。
「平衡感覚というのは、左右の内耳と前庭と視覚、皮膚や筋肉・関節などからの感覚が小脳に伝えられ、統合されることで成り立っています。耳の前庭が弱ると、これが阻害されてしまう」
こう語るのは、伏木宏彰・目白大学保健医療学部教授(57歳、同大耳科学研究所クリニック院長)だ。日本めまい平衡医学会のワーキンググループ委員長として、2021年に「平衡訓練/前庭リハビリテーションの基準」をまとめた責任者でもある。
だからめまいリハビリの、特に【3】以降では、三つの感覚のバランスを調整していくという。なるほど年齢相応の持病もあって、足の裏の感覚が鈍っている私には、必要な訓練であるに違いない。
「めまい」に悩まされている人は多い。関連する文献にはことごとく、「60歳以上の人の約3割が日常生活に支障を来すめまいやふらつきを経験している」と書かれているし、日頃はそんな素振りも見せない友人・知人も、尋ねてみれば、「私も」「俺も」と返してくる場合が少なくない。ストレス社会の進行を考慮すれば、平衡感覚を乱される要因は、今後、ますます増えていきそうだ。