AERA 2024年7月22日号より

「妻より収入が下であることに夫はジレンマを感じます。日本では男子イコール稼ぐもの、稼ぐ力こそが男性性の証明という意識が強い。収入が上なら優位性を保つし、逆なら引け目や負い目を抱き『負けた』と感じる。パートナーより収入が低い苦しみは妻より夫のほうがむしろ大きいでしょう」

 小西さんは政治記者として働いていた通信社を辞め、「駐夫(ちゅうおっと)」=駐在員の夫として妻の海外赴任に同行した経験があり、多くの同じ境遇の夫たちを取材してきたが、妻の方が収入が少ないケースとは異なる面があるという。

 夫は「自分のほうが収入が少ないから家事育児を多くやらねば」とは思わない傾向があるのだ。妻が家事育児を多く担うことは収入の少なさを理由にされることが多い一方で、夫の収入の低さと家事育児分担には必ずしも関係性が見いだせない。

夫より多く稼いでも

 夫より多く稼ぐ妻が家事育児もメインで担うケースも時々見かけるが、なぜそうなるのか。小西さんはその理由を「男側の戦略的なサボタージュ」と説明する。

「夫はあえて家事育児をやらないことによって、男性である優位性を保とうとする場合があるんです。収入で妻に負けている時点で夫は男性性の半分以上を失っている。そこで『家事をしない』という『スト』を行うことによって残りの男性性を示そうとするわけです。私が取材した中に、そんなふうに話す男性は何人かいました」(小西さん)

 女性からすると、なかなかショッキングな話だ。つまり妻が家事育児を多く担うのは、収入に関係なく「女性だから」ということなのか。それはあまりに理不尽なので、収入の多寡に置き換えて女性は自分を納得させてきたのかもしれない。

「結局収入が多かろうと少なかろうと女性にしわ寄せがいっている。それはやはり『男性はこうあるべき、女性はこうあるべき』という性別役割分業意識が厳然として残っているからですよね」(小西さん)

 なんとも暗い気持ちになるが、こんな一例もある。

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