中国・秦始皇帝の兵馬俑。英リバプールで開催された兵馬俑展示(写真:新華社/アフロ)
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 映画『キングダム大将軍の帰還』が公開され、盛り上がりを見せている。主人公・信を演じる山﨑賢人さんのほか、秦国の総大将・王騎将軍を演じる大沢たかおさん、趙国の総大将・龐煖(ほうけん)を演じる吉川晃司さんの名演も見どころだ。

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 彼らは史実においてどう活躍したのか?映画『キングダム』の中国史監修を務めた学習院大学名誉教授・鶴間和幸さんによれば、王騎将軍は史実においても、「秦に尽くした武将であった」という。

 将軍たちを解説した新刊『始皇帝の戦争と将軍たち ――秦の中華統一を支えた近臣集団』(朝日新書)から一部抜粋して解説する。

【『キングダム』の内容にかかわる史実に触れています。ネタバレにご注意ください】

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王齮(おうき) │三代秦王に仕えた将軍

 王齕(おうこつ)とも書く。秦の昭王、荘襄王、秦王嬴政の三代(わずか三日間即位の孝文王を入れれば四代)に仕えた将軍である。始皇三(前二四四)年に亡くなったので、秦王嬴政を支えたのは三年にすぎない。将軍としての活躍はもっぱら昭王のときである。

『史記』の初出は昭王四七(前二六〇)年、左庶長(第一〇級の爵位)王齕として趙の廉頗(れんぱ)と戦ったことが見え、上将軍武安君白起(はくき)のもとで副将として長平の戦いで戦績を挙げた(『史記』白起列伝)。

『史記』秦本紀によれば、昭王四九(前二五八)年に王齕は将軍に任命され、翌年に鄭安平(ていあんぺい)と邯鄲を囲んだが、楚と魏が救援したので、軍を引いている。

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龐煖が倒した旧知の武将とは?