出川は「ORICON NEWS」のインタビューで、ブレーク前の様子について「僕にとって『さんま御殿』や『アメトーーク!』といった番組は(中略)スイッチを入れないといけないので、ちょっとピリッと、ネクタイを締めるじゃないですけど、それくらいの気持ちで行っています。レギュラー番組ではないので、とにかく1回の失敗も許せないんです!(中略)1回の失敗も許されない、この怖さったら、本当にない」(22年10月8日配信)と語っている。そのストレスとプレッシャーは相当だったに違いない。

■「出川イングリッシュ」は高校教材に!?

 出川が実直に仕事に向き合った結果とはいえ、視聴者からの評価がここまで大きく変化したのはなぜか。民放バラエティー番組の制作スタッフは言う。

「昔から“おっさんっぽい”容姿だったので、若いころは特に女性から嫌われていました。しかし、アラ還になり実年齢が追いついて好好爺になった。また、11年から数年間、Eテレの『大!天才てれびくん』のMCをしていたんですが、それを見ていたキッズたちが10代後半~20代前半くらいになり、『出川=かわいい、良い人』というキャラが定着していったのだと思います。この視聴者層は、マーケティングで重視されるF1層が含まれ、広告会社からの受けも良くなったことが、ソフトバンクや永谷園、フマキラーなど有名企業のCM起用につながっているのでしょう。『イッテQ』でのリアクション芸でZ世代の心をわしづかみにしていますが、出川さんの芸は不快にさせる下品さが皆無で、ロケで素人と絡むときも相手への思いやりが感じられます。そういうクリーンな点もポイントでしょう」

「週刊SPA!」元副編集長・芸能デスクの田辺健二氏は出川のすごさを次のように語る。

「あの特徴的な“ダミ声”が生理的に受け付けないといわれていた出川さんも今やリアクション芸人の第一人者。加えて、ここ数年は単に体を張るだけではなく “出川イングリッシュ”という武器も手に入れました。ホテルでチェックインするときに『ワンルーム キー カモン』、イギリスで国会議事堂の場所を尋ねるときに『メニメニ ピーポー トークハウス』など、英語力が絶望的にないのにもかかわらず、物おじせず話しまくる様子は、実際に高校の授業で教材として使われることもあるほど。また、実父と祖父が58歳で亡くなっているため、『58歳で死ぬかも?』と自らも不安だったそうですが、出川さんが58歳の年になった昨年、くしくも盟友である上島竜平さんが亡くなってしまいました。おそらくですが、上島さんの分までリアクション芸人として闘い続ける覚悟と矜持を背負っておられるのではないでしょうか」

 異色の“好感度芸人”は、これからもテレビ界で重宝されそうだ。

(雛里美和)

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雛里美和

雛里美和

ライター。新宿・十二社生まれの氷河期世代。語学系出版社から邦ロックシーンを牽引するライブエージェント(イベンター)を経て、独立。教育からエンタメまで幅広い分野で活動する。

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