塩辛いスープの理由
ヘルシンキ郊外の民間アパートの管理組合長、オスカリ・オヤラさん(44)はこう話す。
「ここが核シェルターだということは、地元民ならみんな知っている。あまり意識してこなかったが、ロシアによるウクライナ侵攻でシェルターの必要性を感じることが多くなってきた」
夜、入ったパブでは、日系企業に勤める男性と雑談した。公共シェルターについて尋ねると、「手ぶらでもいいからとにかく駆け込むんだ」と即答した。どこにシェルターがあるか、常に意識はしているという。
軍事演習の後、食べさせてもらった“軍の最上級のごちそう”は、硬いパンが2切れにバター、ニンジンなどの野菜と鶏肉のスープだった。あのスープはぎょっとするほど塩辛かった。前出のローガンさんはこう言っていた。
「戦場では常に塩分が不足する。取れる時に取るために、味が濃いんだ」
有事の日常を私は知らない。世界のいくつかの場所で戦争が起こり、安全保障環境が変容する国がある中で、フィンランドの人々の当事者意識が印象に残った。(AERAdot.編集部・小山歩)
取材協力/フィンランド大使館
※AERA 2024年7月15日号