「善玉菌を増やす方法は二つあります。一つは、善玉菌になる菌を食べ物から補う方法、もう一つは善玉菌のエサを増やして増殖を助ける方法です。発酵食品には麹(こうじ)菌や乳酸菌など、腸で善玉菌になる菌が豊富。それだけでなく、死んだあとも善玉菌のエサになり、増殖を助けてくれるのです」(舘野さん)

 発酵大国の日本には、味噌やしょうゆ、酢、みりんの調味料から、納豆、日本酒、ぬか漬けに加え、くさや、ふなずしの郷土料理まで、発酵食品がずらりとそろっている。洋食から和食に切り替えるだけで、自然と発酵食品を口にすることになる。

 舘野さんは、「微生物の消化プロセスで、栄養が強化されることも発酵食品のメリットです」と話す。糖質をエネルギーに変えたり、筋肉や神経の疲れをやわらげるビタミンB群や必須アミノ酸などが豊富に含まれるようになるのだ。

 発酵食品が健康に与える好影響は、今年1月30日に発表された国立がん研究センター・社会と健康研究センターによる「多目的コホート研究(JPHC研究)」でも証明された。同センター疫学研究部室長の澤田典絵さんによると、この研究は、食事や生活習慣とがん・脳卒中・心筋梗塞(こうそく)などの病気との関係を明らかにするため、国内の成人男女約9万人を対象に、1995年以降、平均で15年間追跡調査したものだ。対象者に聞いた食事内容から大豆食品と発酵性大豆食品に絞り、食べた量で五つのグループに分けて分析した。

「その結果、男女ともに発酵性大豆食品の摂取量が多いほど、死亡リスクの低下がみられたのです」

 最も摂取量が多いグループは最も少ないグループより約10%も死亡リスクが低かった。とくに女性は傾向が顕著だった。

 この調査の発酵性大豆食品とは、味噌と納豆を指す。最も多く取っていた人たちの摂取量は1日約50グラム。納豆で換算すれば、およそ1パック分だ。

「死因別では、循環器疾患死亡で男女ともに納豆の摂取量が多いほど、リスクが低下する傾向を示しました」(澤田さん)

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